理事長挨拶

理事長 飯島 正文

 本年4月16日から大阪市で開催されました第109回日本皮膚科学会総会において私が理事長に選任され,大変光栄に思うと同時に,その責任の重さをひしひしと感じております.これからの2年間,宮地良樹副理事長ならびに各理事とともに社団法人日本皮膚科学会の運営に取り組んでいくことになります.何とぞよろしくお願い申し上げます.

 明治33年(1900年)東京帝国大学土肥慶蔵教授らにより設立された日本皮膚科学会は既に110年を超える歴史を誇っており,来年,平成23年度の総会・学術大会が第110回ということになります.この間日本皮膚科学会は,我が国における皮膚科医のための専門組織として皮膚科学の発展に大きく貢献し,学会員の日常診療を通じて国民の健康福祉増進に寄与し,また会員自らの研鑚のための認定専門医制度を発展させてまいりました.日本皮膚科学会の定款では「本会は,皮膚科学とその応用に関する研究,教育及び医療の推進を図るとともに,内外の関連団体との連携を促進することにより,皮膚科学の進歩普及を図り,もって学術文化の発展に寄与することを目的とする.」と明記されておりますが,学問の進展のみならず,得られた学術成果を広く情報提供して知識の啓蒙を図り,皮膚疾患の診断・治療を通じて国民の健康福祉増進に努力してまいります.

 前々理事長の玉置邦彦先生が始められた,日本皮膚科学会総会・学術大会を卒後教育に特化した学会とする総会の運営指針は今後も継続されます.また近年の総会では学会参加者が4千人を超える大規模となりますので,会頭には学会場の確保など大きな負担を強いることになります.平成23年度は横浜市で東京女子医科大学川島眞教授を会頭として第110回総会・学術大会が開催されますが,以後は国立京都国際会館とパシフィコ横浜を交互に日本皮膚科学会として総会の会場として予約しておき,選出された会頭の所属地にかかわらず,京都市と横浜市で隔年に総会・学術大会を開催することとなっております.従って今回,平成24年度の会頭に選出された筑波大学大塚藤男教授は第111回総会・学術大会を国立京都国際会館で開催する予定になっております.

 現在,社団法人日本皮膚科学会には早急に取組むべき課題が2つあります.第一は公益社団法人化への対応であります.この度の公益法人制度改革に伴って従来の社団法人は今後,公益社団法人もしくは一般社団法人の何れかを選択することになり,平成25年11月30日が審査書類の最終提出期限となります.公益社団法人として認定されるためには資金の内部留保率の適正化,学会の定款・施行細則の改定を含む各種の対応策を求められることが予想され,公益社団法人化を本気で目指すためには平成24年度総会,遅くとも平成25年度総会において定款・施行細則の改定等,一連の手続きを終了する必要が生じます.現在までのところ日本医学会に所属する各学会は公益法人化を目指すのか,一般法人にとどまるのか模様眺めの学会が大半と聞いてはおりますが,社団法人日本皮膚科学会としては公益社団法人化に向けた具体的な取組みを開始したいと考えております.

 第二の課題は女性医師の問題です.女性医師の増加は時代の流れであり,特に日本皮膚科学会では昨今の新入会員に占める女性の割合が6割を超えております.しかし女性皮膚科医の殆どが10年目までに医療の現場を去る,あるいは専門医として活動性の高い研鑚の道から外れる,という現実に直面する時,学会としての対応が必要と考えられます.女性医師問題については日本医学会,日本医師会,厚生労働省からも対策が要請されており,学会時の託児所の充実など具体化した対策もあります.女性医師の意見を学会運営に反映させる目的で,前理事長橋本公二先生のご尽力により,社団法人日本皮膚科学会定款施行細則第7条2項に「理事会の定めるところにより,女性理事1名を追加して選出することができる」ことが提唱され,会則検討委員会,理事会で承認されました.本施行細則の改定は第109回総会の代議員会においてもご承認いただきました.従って今後,次回,平成24年度の代議員・理事改選から本条項を適用することができるよう,具体的な選出方法について検討し,皆様にお示ししたいと考えております.

 学会とは会員のための利益共同体,一種の「ギルド」であると私は考えます.我々の長年の夢であった乾癬に対する生物製剤の早期承認の実現のために「乾癬におけるTNFα阻害薬の使用指針および安全対策マニュアル」を策定し,かつ施設認定を学会自らが行う,という日本皮膚科学会の対応が当局から高く評価された結果,乾癬に対する早期の薬事承認が実現した,という経緯があります.学会として理想的な対応であったと評価します.私は厚生労働省医薬品・感染等副作用被害判定部会長,保険局医療課医療技術参与,先進医療専門家会議構成員など,従来皮膚科医の参画することのなかった役職で行政に携わってきましたが,長年の経験を今後の日本皮膚科学会運営に生かしたいと考えております.

 この度日本皮膚科学会では「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)」を公表しましたが,4月20日の公式発表前から各種マスコミが報ずるところとなり,本症に対する社会的関心の高さを実感いたしました.皮膚疾患や皮膚の健康について学会から各種情報を発信し,広く国民全体の健康増進に寄与することが学会に課せられた社会的責務であると考えます.今後も学会として積極的な広報活動の充実に努力したいと考えます.

 病院皮膚科の崩壊,標榜科の問題,診療報酬改定,美容皮膚科との関連など,日本皮膚科学会には諸問題が山積しており,それぞれ真剣に対処すべきと考えます,そのためには会員の皆さまのご支援とご理解が不可欠です.
今後ともご指導,ご鞭撻のほどをよろしくお願い申上げます.

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