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国際活動

第34回ヨーロッパ皮膚科学・性病学会(EADV 2025 パリ大会)参加報告

2025年9月17日~20日に、フランス・パリで第34回EADV Congress(European Academy of Dermatology and Venereology:ヨーロッパ皮膚科学・性病学会)が開催されました。
世界142か国から約2万人を超える皮膚科専門医、研究者、医療従事者が一堂に会し、最新の研究成果発表、臨床報告、教育セッションが数多く行われました。


EADVブース:連日、ロゴの前では記念撮影をする参加者の列ができていました。

学会概要

EADVは欧州最大規模の皮膚科関連学会であり、皮膚疾患および性感染症に関する研究促進、教育支援、医療政策への貢献を目的としています。2025年大会は、延べ床面積約7万m2(東京ドーム約1.5個分)を誇るヨーロッパ最大級のコンベンションセンター「Paris Convention Center」にて開催されました。この会場は、パリ南西部の巨大展示施設「Paris Expo Porte de Versailles」内に位置し、欧州最大規模の国際会議場として知られています。
セッションルーム、展示会場、企業ミーティングルームやラウンジなどが整備され、バナーや大型看板で彩られた華やかな雰囲気の中、多くの参加者が行き交っていました。


会場外観:パリ市街を一望できる、全面ガラス張りの開放的な建物が印象的でした。

講演会場とプログラム

大会のメイン会場では、約2,400席規模の講演ホールが使用され、複数の大型スクリーンと音響設備により、臨場感あふれるプレゼンテーションが展開されました。
また、セッションごとに入退場時のQRコード管理が徹底され、運営の効率化が進んでいました。
プログラムは合計172の学術セッション、登壇者数594名、採択抄録数は4,097件に上り、臨床・研究・教育の各分野で多彩な発表が行われました。


メイン会場の様子:登壇者の姿が大型スクリーンに映し出され、臨場感あふれる発表が行われていました。

展示会場の様子

展示エリアは2階部分の約15,000m2(サッカーコート約2面分)にわたり、欧州を代表する製薬・化粧品企業を中心に140社が出展。無料のコーヒーサービスやタッチアップ体験、製品クイズなど、来場者参加型のブースが多く、終日多くの人で賑わっていました。また、ブランドごとにスタンプやQRコードでの参加認証を行い、サンプルバッグを配布する企業も多く、バッグを受け取るために並ぶ参加者の列がいくつも見られました。


企業展示エリア:大規模ブースからコンパクトなものまで多様な展示が並び、終日多くの来場者で賑わっていました。

EADV/JDA ジョイントセッション

本大会では、初めてEADV / JDA(日本皮膚科学会)ジョイントセッションが開催されました。
EADVが公式プログラムとしてジョイントセッションを実施しているのは、世界でもAAD(米国皮膚科学会)とJDAのみです。
「欧州と日本で提唱された皮膚疾患の紹介」をテーマに、藤本学先生(JDA理事長)とProf. Branka Marinovic(EADV理事長)が座長を務め、JDAからは久保亮治先生(神戸大学)、椛島健治先生(京都大学)、EADVからはProf. Wolfram Hoetzenecker(リンツ/オーストリア)、Prof. Maarten Vermeer(ライデン/オランダ)が登壇し、最新の研究成果を発表しました。
質疑応答ではヨーロッパの皮膚科医の先生方も積極的に質問を投げかけ、白熱した議論が交わされました。
聴講者からは「非常にレベルの高いセッションだった。ぜひ今後も継続してほしい」との声も寄せられました。
今後も両学会の連携強化と国際的な研究交流の継続が期待されます。


左から:藤本学先生、Prof. Maarten Vermeer、久保亮治先生、Prof. Branka Marinovic、椛島健治先生、Prof. Alain Hovnanian(質疑応答にご参加いただいた先生)、Prof. Wolfram Hoetzenecker


セッションルーム前のディスプレイ:各スピーチのテーマやテーマに関連した内容がモニターに表示されていました。

教育・国際協力プログラム

また、EADV TDTF(Tropical Dermatology Task Force)とGLODERMによる共同シンポジウムも開催され、熱帯地域や開発途上国における皮膚疾患対策、医療アクセスの改善、教育支援など、社会的意義の高い取り組みが紹介されました。
GLODERMは、ILDS(国際皮膚科学会連合)の実務機関であるIFD(International Foundation for Dermatology)が支援する国際的な教育・交流プログラムで、世界中の若手皮膚科医の育成を目的としています。
日本皮膚科学会もIFDに毎年1万ドルを寄付し、こうした国際的な活動を支援しています。


難民および避難民の皮膚疾患医療へのアクセス改善に関するプレゼンテーション

全体としてのまとめ

今回会場を訪れてまず感じたのは、そのスケールの大きさと、運営・施設の整備の行き届いた環境でした。登録、入退場、セッションスケジュール、展示エリア案内など、全般にわたって一元的にデジタル管理されており、移動や手続きにかかるロスタイムが少ないと感じました。特に今回の会場は、過去2年間のEADV Congress(2023年ベルリン、2024年アムステルダム)と比較しても、レイアウトがシンプルで分かりやすく、動線の明快さが印象的でした。
会期2日目にはパリ市内でストライキが予定されており、運営への影響が懸念されましたが、会場に来られなかったスタッフがいたものの、迅速に人員の再配置が行われ、大きな支障はなかったとのことです。
また、会場周辺にはカフェやレストラン、緑地空間も整備されており、朝の散策や夕刻の交流タイムも快適に過ごすことができました。

一方で、展示会場では日本企業の出展がごくわずかであり、採択抄録に関しても、全体で4千件以上あった中、日本からの登録は確認できた範囲で30件未満にとどまっているようでした。こうした状況からも、日本からの発信力には今後さらに強化の余地を感じました。
そのような中で開催されたJDA / EADVジョイントセッションは、両学会の連携が実を結んだ意義ある取り組みでした。
今後もこのような国際的な交流を通じて、日本の研究や臨床の知見が世界の発展に貢献していくことを願っています。

次回大会は、2026年9月30日~10月3日、オーストリア・ウィーンで開催予定です。


今後7年間の大会開催予定日時と場所が公開されていました。

JDA事務局 国際チーム 西海絢乃