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国際活動

留学体験レポート:Medical University of Graz / Centre Léon Bérard – 馬場 裕子

2026年10月19日公開

東京歯科大学大学市川総合病院皮膚科
馬場裕子

研究・診療に関する活動報告

この度、2025年9月より11月にかけての3ヶ月間、皮膚病理組織学を中心にヨーロッパで勉強する機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。私は本留学に先立ち、2020年1月から6月にかけて AustriaのMedical University of Graz, Research Unit Dermatopathology of the Department of Dermatologyにて研修させていただきました。奇しくもCOVID流行期と重なり、他では得られなかった経験や、指導してくださるLorenzo Cerroni教授との深い絆を得ることができましたが、交流面での制限があった事は否めませんでした。
今回は、European Academy of Dermatology & Venerology Congress と European Society of Pathology Congressへの参加、ICDP-UEMS認定国際皮膚病理専門医試験の受験に合わせ、改めてMedical University of Graz, Research Unit Dermatopathology of the Department of Dermatology(Austria)とDépartement de Biopathologie, Centre Léon Bérard(France)のArnaud de la Fouchardière先生のもとで研修を行うことが叶いました。

European Academy of Dermatology and Venerology Congress(EADV)およびEuropean Society of Pathology Congress(ESP)参加

2025年9月6–10日にはVienna(Austria)でESPが、9月17–20日にはParis(France)でEADVが開催されました。欧州を中心に、世界中から皮膚科医・病理医が参加する大規模な学会でした。そこでは、昨今進んでいるMelanomaやBlue nevusに対する遺伝子解析、白斑の臨床試験や新規治療に関するセッションを中心に学びました。色素性腫瘍の遺伝子解析に関する講演を行っていたArnaud de la Fouchardière先生のもとで、その後研修することができ、実際の現場での解析方法を学べたことは大変貴重な経験でした。また、アトピー性皮膚炎治療薬が複数新規登場したことを受け、白斑にも効果を示す可能性が注目されていましたが、実際に症例報告や治験にて明確な効果が提示されており、治療選択に有用な知見を得られました。


European Academy of Dermatology and Venerology Congress(EADV)

ICDP-UEMS認定国際皮膚病理専門医試験

2025年10月4日にFrankfurt(Germany)で開催されました。皮膚科または病理専門医取得者を対象とし、顕微鏡を用いた読影問題(70問)、臨床写真の問題(60問)、最新の知見や論文を扱う文章問題(50問)からなる、1日がかりの長丁場の試験でした。日本には皮膚病理専門医制度がないため国際資格の取得を目指しましたが、疾患の地域差、Home doctor制度の浸透や保険制度の違いにより欧州では受診が遅れ重症化しうる状況など、日本と欧州の症例では臨床像・病理像に相違があり、その点に苦労しました。
無事に合格し、留学の大きな目的の一つを達成することができ安堵しております。

Medical University of Graz と Département de Biopathologie, Centre Léon Bérardでの研修

Lorenzo Cerroni教授はAckermann派と呼ばれるclassicalな形態学に基づく病理診断を、Arnaud de la Fouchardière先生は臨床像や病理像と遺伝子解析を組み合わせた診断を得意とされます。両者から同時期に学ぶことができたのは、大変有意義でした。近年、遺伝子解析が主流となりつつありますが、臨床像や形態学に直接触れられる皮膚科は、これらを組み合わせた総合診断が今後も重要であると強く感じています。日本国内では遺伝子解析を施行できる場面は限られますが、臨床像やS100、HMB45、MelanA、PRAMEなど汎用される免疫組織化学染色の動態を深く読影することで、腫瘍内の遺伝子変異の局在や予後を推測し、診断・治療選択に活かすことは可能だと感じました。今後もこの能力を高めるべく、引き続き精進して参りたいと思います。


Medical University of Graz:Lorenzo Cerroni先生を囲んで


Département de Biopathologie, Centre Léon Bérard:優しいArnaud de la Fouchardière先生

時に、私はアート鑑賞が大好きです。元々好きではありましたが、こちらも2020年のAustria滞在をきっかけに人生の楽しみの一つになりました。ロックダウン中も美術館は開館していたので、普段は観光客で行列をなすような美術館も自分のペースで何度もゆっくり訪れられました。アート鑑賞と皮膚病理は通ずるものがあります。その頃はとても真剣な気持ちで、自分の病理読影力を高めるために、何度も通っていました。たくさんの芸術家(疾患)がおり、first impressionの大切さ、色調の繊細さ(HE染色の青とピンクの世界)、タッチの差(細胞の種類、細胞配列)など、自分がその絵(標本)から何を感じるか読み取れるか、作品の前では没頭して集中できます。今回のヨーロッパ滞在中もせっせとアート鑑賞に出かけ、特にArles(France)にあるLee Ufan Arlesは訪れるのをとても楽しみにしていた美術館でした。アルルの女、という組曲には馴染みがあるかもしれません。今はもう遺跡となったローマ文化の色濃い南仏の街に、李禹煥の何もないところにある哲学の掛け合わせは素晴らしいものでした。自分の趣味と専門領域が重なることほど幸せなことはなく、私は今後もせっせとアート鑑賞に励んで行きたいと思います。


Lee Ufan Arles