「OTC類似薬の保険給付見直し案」に関する共同声明を発表しました
会員各位
本会は、2026年9月3日、認定NPO法人日本アレルギー友の会が主催する「OTC類似薬の保険給付見直し案」に関する記者説明会に、日本臨床皮膚科医会とともに出席し、皮膚科医療の専門性および患者の生活実態の観点から、三団体共同で以下のとおり声明を発表いたしましたので、ご報告いたします。
2026年9月3日
公益社団法人日本皮膚科学会
理事長 藤本 学
OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明
日本皮膚科学会 日本臨床皮膚科医会 認定NPO法人日本アレルギー友の会
2026年9月
1.声明の趣旨
政府が検討を進める「OTC類似薬の保険給付見直し案」について、皮膚科医療の専門性および患者の生活実態の観点から重大な懸念があるため、三団体は共同して本声明を公表する。
本見直し案は、単なる薬剤費負担の問題ではなく、我が国の皮膚科診療のあり方そのものに影響する制度であり、国民の健康に直結する重大な課題である。
2.制度趣旨との齟齬
見直し案には、アトピー性皮膚炎をはじめとする重症・慢性疾患が多数含まれている。
これは「軽症疾患の自己治療を促す」という制度趣旨と整合せず、なし崩し的な対象拡大である。
3.医学的誤認に基づく制度設計
皮膚科治療の根幹であるステロイド外用薬が「急性増悪時の短期使用薬」と誤認されている。
診療ガイドラインは、寛解維持のための計画的外用を推奨しており、外用薬は「塗り薬」ではなく皮膚バリア治療という医療行為である。
医学的誤認に基づく負担増は、制度として成立しない。
4.皮膚科医療の基盤への影響
負担増により標準治療の継続が困難となれば、再燃・重症化が増加し、受診抑制・自己判断・誤用・経皮感作という連鎖が生じる。
皮膚科医療の基盤が揺らぎ、国民の安全性に直結する。
5.歴史的教訓と現在の誤情報
1990年代の「悪魔の薬」報道は科学的根拠のない恐怖を全国に拡散し、受診中断・重症化が続出した。
その後、臨床皮膚科医会と患者団体が協働し、誤情報を是正し標準治療を回復してきた。
しかし現在も「脱ステ」「民間療法」「高額サプリ」等の誤情報がSNSで拡散し、若年層の受診遅延・重症化が続いている。
外用薬の負担増は、誤情報に流される患者をさらに増やす。
6.公衆衛生上の重大な懸念
茶しずく石けん事件では、加水分解コムギ末による経皮感作により全国1,800人以上が食物アレルギーを新規発症した。
皮膚バリア破綻が公衆衛生事案を引き起こすことは明確である。
皮膚は免疫の入口であり、皮膚科医療は国民医療の基盤である。
7.患者・家族の生活実態
アトピー性皮膚炎は痛み、痒み、睡眠障害、皮膚裂傷、浸出液などにより生活を深刻に損なう疾患である。
外用薬は「生きるための薬」であり、寛解維持のための計画的外用が不可欠である。
負担増は治療中断・再燃・重症化を招き、誤情報に惑わされる危険性は今も続く。
8.三団体共同の要望
1.軽症疾患と中等症・重症・慢性疾患を区別し、なし崩し的な対象拡大を行わないこと。
2.ステロイド外用薬を「短期使用薬」と誤認した負担増を撤回すること。
3.皮膚科診療の根幹を損なわない制度設計を行うこと。
4.検討過程に当事者の声を適切に反映すること。
9.総括
本見直し案は、皮膚科医療の基盤と国民の健康に直結する制度である。
三団体は、国民の安全を守る観点から、慎重な再検討を強く求める。
会員専用ページ