解説:BCCに対する局所療法剤として、アメリカ食品医薬局(FDA)はチミジン合成阻害薬である5-FU軟膏のみを承認している。過去40年にわたる幅広い経験から、5-FU局所治療は低リスク部位の表在型に限って適応があると考えられる。この場合は5% 5-FU軟膏にて95%以上の治癒率が得られる(
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4)。表在型以外の組織型、再発例、高リスク部位については5-FU軟膏による治癒率が低く、外用治療を行っても深部に腫瘍が残存する可能性が高い(
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7)。経表皮吸収を高めるためにphosphatidyl cholineを基剤とした5-FUクリームの使用経験や、エピネフリン添加ゲルによる腫瘍内注入も試みられているが、十分なエビデンスに乏しい(
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一般には5-FU局所投与は、5%製剤を1日2回、少なくとも3〜6週間(臨床的反応によっては10週間以上)継続する。十分な治療効果を得るためには、5-FUの濃度(1%のクリームないし溶液、2ないし5%のクリーム、5%の溶液)、使用頻度、ドレッシング法、臨床組織学的病型、患者のスキンタイプ、治療前後の日光照射の程度などの要因を考慮に入れる必要がある。
本剤の有害事象は第一に投与部位における急性炎症反応である。局所の疼痛や熱感、紅斑・浮腫、浸出液を伴うびらん・潰瘍、二次感染などが挙げられる。特に粘膜の近傍に塗布した場合は、これらの部位の感覚が鋭敏となるため注意が必要である。炎症反応自体は5-FU外用の効果を示すものであり、むしろそれがみられないときは治療レジメンを変更しなければならない。第二に炎症反応の治癒後に強い色素沈着が現れ、長期間にわたって美容的問題を生ずることがある。また高リスク部位に治療を施した場合の、肥厚性瘢痕も問題になる。その他に、稀にではあるが、5-FUないしその溶液に対するアレルギー性の接触皮膚炎、治療に伴う光線過敏症、一時的な爪甲剥離と爪甲萎縮、持続する血管拡張、薬剤性の類天疱瘡、虚血性心疾患、代謝酵素のジヒドロピリミジン脱水素酵素欠損症患者における全身毒性などが報告されている(
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