解説:基底細胞癌(BCC)の治療を行ったすべての患者に、長期間の経過観察は必ずしも必要ではない。実際の経過観察法に関しては、その頻度や期間等の明確なコンセンサスはない。しかし、その主な目的は腫瘍の再発および新規病変の早期発見と治療にある。一般的には、術後の初年度は6ヶ月ごとに、2〜3年間は1年ごとに経過を観察する。
第一の腫瘍の局所再発は、約50%が最初の2年間に、66%が3年間に、80%が5年間に、それぞれ明らかになる(
1)。再発腫瘍の検出については、視診、触診、さらに患者の感覚変化などに注意し、疑わしい部位は積極的に生検で確認すべきである。
第二の新規病変に関しては、BCCが発生した患者は他の皮膚癌を生じるリスクが高い(
7,
8)。引き続き有棘細胞癌を発症するリスクは5〜10%であり、メラノーマは一般人に比べて約2〜4倍と考えられている。さらに特筆すべき点は、ひとつのBCCを発症した患者の約20%が1年以内に、40%が5年以内に別のBCCを発症する事実である(
2,
3,
4,
5,
6)。複数のBCCを発症した患者はさらにリスクが上昇し、特に色白の肌(fair skin type)ではよりその傾向が強い。最初の2年以内に最もリスクが高いが、年次ごとのリスクは5年間を通して、一般人の10〜12倍にもなる(
4)。新規病変を早期に発見できれば治療後の再発の危険も低くなり、様々な治療法を選択できる。治療による整容的・機能的側面も考えれば、治療に伴う副次的作用を軽減するため、早期の対処が望ましい。