BCC-CQ2
基底細胞癌の発生予防のために脂腺母斑は切除すべきか
推奨度:C1
推奨文:基底細胞癌(BCC)の発生予防のために脂腺母斑を切除した方がよいという十分なエビデンスは存在しない。ただし、本母斑は、中年以降になって2次性に各種の付属器腫瘍を生じることがあるので、整容面も考慮し、適当な時期に切除を検討してもよい。
解説:従来より、脂腺母斑(類器官母斑)は基底細胞癌(BCC)をはじめとする種々の悪性腫瘍の発生母地となるため早期の切除が必要とされていた。しかし最近、従来「脂腺母斑上に生じた基底細胞癌」と診断された病変の多くが良性の毛芽腫である可能性が指摘されている。近年の切除された脂腺母斑すべての病理学的検討(100例以上の報告)でも、脂腺母斑上に生じたBCCは0.8%、0%、0.6%、2.2%と極めて低い合併率となっている(1,2,3,4)。これらの報告症例は年齢を問わずに集積されたものであり、正確な発生率とはいえない。16歳以下の症例を対象とした757例の脂腺母斑の解析でもBCCの発生は0%と報告されており、小児期に悪性腫瘍が発症する危険性は極めて低いといえる(5)。しかしながら、中高年者については別個に調査、検討する必要がある。
  以上より、脂腺母斑からBCCが生じやすいというエビデンスはなく、予防的な見地から小児期にこれを切除することは推奨できない。しかし、本母斑には中年以降になって各種の付属期腫瘍を生じてくることが知られているので、整容面も考慮し、適当な時期に切除することを考えてもよい。