解説:基底細胞癌の外科的切除の際には、臨床的な腫瘍境界を越えた組織学的な浸潤(subclinical extension; SE)の存在が問題となる。もし術前の画像検査でSEの程度が評価できれば、より正確な切除範囲の決定が可能となる。
超音波検査は周波数が低ければ深部組織までの観察が可能であるが解像度が低下し、周波数が高くなれば解像度は向上するが逆に深部の評価がしにくいという特性があり、基底細胞癌の浸潤境界の評価には20MHz以上の高周波エコーが必要とされる。基底細胞癌における水平方向のSEを20MHzエコーで評価した報告では、29%の症例において理学的所見による計測を超えたSEがエコーで検出できたと報告されている(
1)。深部方向の腫瘍径の計測において40MHzエコーを用いた報告では(
2)、エコーでの計測と組織学的に計測した垂直腫瘍径の間に強い相関関係が認められた。しかし、この研究で対象にされた症例が垂直径2mm以下の基底細胞癌であったので注意を要する。本邦においてはいずれも症例報告ではあるが、基底細胞癌の初回治療例(
3,
4)、再発例(
5)のSEをエコーで術前に評価できたとする報告がある。
SEの術前評価としての超音波検査の有用性を証明するには、それが水平方向ないし垂直方向のいずれであるにせよ、切除後の組織学的な計測値をアウトカムとしてエコー上の計測値と比較検討する必要があるが、それを実践できている報告は少ない。その意味ではエビデンスとしては不十分ではある。しかし、低侵襲、低コストで外来の診察室レベルで容易に行えるという点を含めて総合的に考えれば、超音波検査は基底細胞癌の手術計画のための術前検査として推奨してよいと思われる。