BCC-CQ8
基底細胞癌の再発率・断端陽性率を低下させるにはどの深さで切除するか
推奨度:B
推奨文:多くの場合、皮下脂肪織を十分含めて切除すれば治癒切除となるが、組織型が高リスク(斑状強皮症型、浸潤型、微小結節型)もしくは腫瘍径が大きい場合にはより深部までの切除を要することがある。
解説:基底細胞癌(BCC)の外科的切除において切除マージンを設定する際には、側方であれば皮疹の臨床的境界を見極めた上でそこから数o離して皮切するのが一般的である。しかし深部方向については基準とすべき境界がないため、術前の切除範囲設定に苦慮することが多い。超音波検査による深部境界の評価もある程度は有用である。
  BCCの深部浸潤を予測する因子としては、組織型と腫瘍径が挙げられる(1)。組織型別にみると、通常の結節型のBCCの場合であっても33%は真皮内に留まらず皮下へ浸潤するが(2)、Mohs手術のデータでは78〜89%の症例が皮下脂肪織までの除去で完全切除に至っている(3,4)。他方、高リスクな組織型とされる浸潤型、微小結節型、斑状強皮症型の3型では皮下への浸潤率はいずれも50%を超えており(2)、前2者ではMohs手術において皮下脂肪織レベルでの除去で完全切除に至った症例は半数程度にすぎない(3,4)。また、51例の斑状強皮症型BCCの検討では7例(14%)に軟骨膜、筋層などへの深部浸潤がみられたとする報告がある(5)。
 組織型の他にBCCの深部浸潤に影響する因子として腫瘍径がある(1)。腫瘍径が大きければ深部方向へのsubclinical extensionも大きいので、それを考慮に入れた切除深度の設定が必要となる。また、BCCの好発部位である鼻部においては、鼻翼および鼻翼溝では筋層まで浸潤する例が多く、粘膜のみを残すか場合によっては全層切除を要する(6)。
  以上より、BCCの完全除去に必要な切除深度を一律に規定することはできないが、結節型、表在型であれば脂肪織を十分含める深さで切除すれば多くの場合で根治が得られると考えられる。しかし、腫瘍径の大きな症例では脂肪織全層、または下部組織も含めた切除を要する場合がある。高リスク組織型である浸潤型、微小結節型、斑状強皮症型については、少なくとも脂肪織全層までの切除が必要であり、下床の筋層、軟骨等の合併切除を要する確率は結節型に比して明らかに高い。下床断端を確認するには術中迅速病理検査を併用するか、即時再建を行わず、完全切除を組織学的に確認してから二期的手術とする方法も有用である(7,8)。