推奨文:再発の危険性が特に高いメラノーマ患者では、所属リンパ節廓清後の放射線療法により再発率が低下するので、実施が勧められる。しかし、これによる生存率の向上は証明されていない。
解説:予防的所属リンパ節郭清術については、4件のランダム化比較試験すべてにおいて予後への意義が証明されなかった。しかし、本腫瘍がひとたびリンパ節転移を生じると出血、感染、痛み、四肢の浮腫などが生じ、生活の質が著しく低下する(
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メラノーマの手術後の放射線療法については、再発の危険性が高い症例を的確に選択しなければならない。原発巣周囲の再発リスクの高い症例としては神経向性の線維化型(desmoplastic neurotropic type)、腫瘍の厚さが4 mmを越えるもの、リンパ節転移・潰瘍・衛星病巣の存在、四肢遠位や頭頸部の原発、切除断端陽性例などがあげられる(
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4)。一方、所属リンパ節郭清術後の再発危険性については、被膜外浸潤、4個以上のリンパ節転移、大きなリンパ節転移巣(3 cm以上)、頸部リンパ節転移、再発例、センチネルリンパ節生検陽性での不十分な郭清例などがあげられる(
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8)。
頭頸部原発例の中でも原発巣が厚い症例は、局所・領域リンパ節の再発率が高いとされ、郭清術単独では約半数の症例で再発がみられる(
9)。このようなハイリスクの頭頸部原発例に対し一回6 Gyで週2回、総線量30 Gyの所属リンパ節への予防照射を行った結果、5年局所・領域リンパ節制御率が88%と従来の報告に比べて良好であり、有害事象も軽度であったと報告された(
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8)。また、臨床的な頸部リンパ節転移例に対し頸部郭清術後(多くは部分的頸部郭清術)、前述のスケジュールで術後放射線療法を施行し、10年局所・領域リンパ節制御率が94%、無病生存率は42%であったと報告されている(
6)。これらの結果を受け、郭清術後の放射線療法に関する第II相試験が行われ、術後照射を未施行の従来の成績に比べ、リンパ節転移の再発率が50%減少したと報告された。また、腋窩リンパ節転移を生じた体幹部原発例や上肢原発例(一部に原発不明例や頭頸部原発例を含む)に対し、腋窩郭清術施行後、放射線療法を実施したところ、腋窩領域の制御率は良好で、有害事象としての上肢の浮腫も許容範囲内であったと報告されている(
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10)。しかし、これによって生存率が向上するかは不明である(
1)。
第III相試験の報告はなく、限られた施設での第II相試験および後ろ向き研究しかないが、被膜外進展例、最大径が3 cmを越えるリンパ節を有する例、多発リンパ節転移例、再発例、頭頸部原発例で根治的頸部郭清術が施行されなかった症例では、所属リンパ節再発の可能性が高いので、術後放射線療法の実施が考慮される。
至適照射スケジュールは確立していないが、1回線量を2 Gyとし週5回照射で総線量50〜70 Gyを照射する方法や、1回線量を5〜6 Gyとし週2回照射で30 Gy程度を照射する方法などがある(
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