解説:メラノーマの肝転移に対する化学療法剤の肝動注あるいは動注・塞栓療法の奏効率は40%〜70%であり、奏効期間中央値は数か月から1年程度、生存期間中央値は11月〜24月と報告されている(
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9)。全身的化学療法による肝転移患者の生存期間中央値は概ね数か月程度であるので、適応症例を選択すれば、肝動注あるいは動注・塞栓療法によって生存期間の延長を期待できる可能性がある(
10)。ただし、本療法の適応は主として転移が肝臓に限局している患者であり、1臓器転移という良い予後因子を持っている。ランダム化比較試験も行われていないので、本療法の生存期間延長効果は現時点では確証されていない(
11)。肝動注や塞栓療法の操作は侵襲を伴うが、動注化学療法による有害反応は全身的化学療法に比較すると軽度な傾向がある。
肝動注あるいは動注・塞栓療法が適応となる条件として定まったものはないが、一般に肝臓以外の臓器に転移がないか、あっても転移巣が制御されている場合が適応となる。これらの条件を満たすのは主に眼球原発のメラノーマであり、皮膚原発の場合は遠隔転移が肝臓に限局することは稀である(
1)。なお、本療法を実施する前に、外科切除との優劣について慎重に評価する必要がある。
動注薬剤としては、欧米では単剤でcisplatin、fotemustine、1,3-bis(2-chloroethyl)-1-nitrosourea(BCNU)、melphalanを用いたり、cisplatinやcarboplatinと他剤の併用が行われる(
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8)。本邦では主としてcisplatin単剤の動注が行われている(
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