これまでRCTにてDTIC単剤と比較検討された多剤併用化学療法としては、cisplatin+ vinblastine+DTIC、cisplatin+ DTIC+carmustine+tamoxifen、DTIC+IFN-α、DTIC+tamoxifenなどがある。cisplatin+ vinblastine+DTICとDTIC単剤を比較したRCTでは、奏効率はそれぞれ24%対11%だったが、生存期間中央値は6カ月対5カ月で差がなかった(2)。cisplatin+DTIC+carmustine+tamoxifenはDartmouth regimenとして初期には50%を超える高い奏効率が報告され、注目されたが、DTIC単剤とのRCTでは、奏効率18%対10%、生存期間中央値7カ月対7カ月で有意差は認められなかった(3)。tamoxifenとDTICの併用療法については、DTIC単剤と比較したRCTにて奏効率28%対12%、生存期間中央値48週対29週と有意差がみられたが、その後の追試ではtamoxifenの併用効果は確認できなかった(4,5)。DTIC+IFN-αについては20件のRCT(n=3273)のメタアナリシスがなされており、併用療法はDTIC単独に比べて奏効率を53%上昇させたが、生存期間には有意差は認められなかった(6)。DTIC単剤との比較ではないが、bleomycin,vincristine,lomustine,dacarbazine(BOLD)にIFN-αを併用する群とDTIC+IFN-α群を比較した試験でも生存期間に有意差は認められなかった(7)。
cisplatinを中心とする化学療法に引き続いてinterleukin-2とIFN-αを投与する連続的生物化学療法も近年注目された治療法である。奏効率約50%、完全奏効10-20%、2年を超える完全奏効が10%みられ、その半数の5%は完全奏効が6年以上持続するという高い効果が報告された(2)。しかし、その後に実施されたRCTでは1件を除いてinterleukin-2とIFN-αを併用することの効果はみられず、有用性は確立されていない。なお、連続的生物化学療法とDTIC単剤とのRCTは行われていない(8,9,10,11,12)。
以上、進行期メラノーマに対して有益な化学療法は現時点では何も存在しない(13)。今のところDTICがメラノーマの標準薬とされているが、その有益性は満足できるものではない。したがって、DTICに勝る有益性をもつ治療薬の開発が切望される。なお現時点では、DTIC以外の多剤併用化学療法あるいは生物化学療法は臨床試験の範疇で行われるべきものである。