MM-CQ21
遠隔転移を生じたメラノーマ患者にインターロイキン2(IL-2)の大量静注療法を行うことは有益か
推奨度:C1〜C2
推奨文:進行期メラノーマ患者に対するIL-2の大量静注療法は、奏効率15%前後、完全奏効率6%程度であり、しかも強い有害反応を伴うので、有益とはいえない。ただし、本療法の奏効例の中には、長期間にわたって再発なしに生存する患者が低率(約5%)ではあるが存在する。
解説:IL-2は腫瘍細胞への直接的作用はないが、リンパ球の増殖をはじめとする強い免疫賦活作用を有するサイトカインであり、進行期メラノーマ患者に対し、種々の投与法で効果が検討されてきた。その中で米国の国立癌研究所(NCI)が主導した大量静注療法がもっとも多くの患者に施行され、データが詳細に解析されている。

 NCIのRosenbergらの投与法は、1回72万IU/kgのIL-2を15分間で静注することを8時間毎に繰り返す。5日間で計14回投与して1サイクルとし、6〜9日休薬後、さらに1サイクル繰り返して、1コースとする(1)。1985~1993年にエントリーされたIL-2大量静注療法施行270例のMM患者について1998年12月時点での解析結果が報告されている(2)。生存患者の追跡期間中央値は7年を超え、奏効率は16%(43人)で、完全奏効が17人(6%)にみられた。全体としての生存期間中央値は12カ月。奏効期間は全奏効例で8.9カ月、部分奏効26例で5.9ヵ月であった。完全奏効の奏効期間中央値は少なくとも59カ月であった。奏効例中の12人(うち2人は部分奏効症例)は70カ月から150カ月以上の長期間、再発や進行のない状態が持続した。30カ月以上奏効が持続した患者ではその後に再発、進行はみられなかった。以上より本治療法の奏効率は高くはないが、一旦完全奏効がえられるとそれが持続し、完治できる可能性がある。

 Lindseyらは、IL-2大量静注療法の治療コースの実施回数と奏効との関係を検討し、奏効した23人中21人の患者は最初のコース後に少なくとも部分奏効となっていることを見出した。2コース実施しても反応しない患者にさらに本治療を追加実施しても効果は望めなかった(3)。本治療への反応に関与する因子については、皮膚・皮下転移が他臓器の転移よりもよく反応する。また、IL-2の投与終了後の反跳性リンパ球増多が高値を示す者や白斑を生じる者で奏効する例が多い。

 本治療では初期に6例が敗血症を生じて死亡した。しかしその後は、有害反応への対処法が確立され、死亡例は報告されていない。本療法の有害反応に適切に対処するためのclinical pathways(4)や安全な投与法のガイドラインなどが具体的に提案されている(5)。

 米国以外からの本療法の報告は少ないが、イスラエルのPappoらは、米国NCIの治療法と同じ高用量IL-2静注療法を21人の転移性MM患者に施行し(6)、5例の部分奏効(3カ月から3年持続)と1例の完全奏効(17カ月持続)がえられたという(RR:28.6%)。ただし、1例の治療関連死が出ている。なお、本邦ではIL-2が高薬価なこともあり、本療法を実施することは困難である。