解説:メラノーマ患者の原発巣治療後には定期的な経過観察が行われる。その主目的は治療可能な転移や局所再発を早期に発見することにあるが、経過観察の最適な間隔や方法に関してはコンセンサスがえられていない。
経過観察方法に関しては多数の研究が行われており(
1)、初回再発の50-85%は局所〜所属リンパ節に起き、発見の契機としては本人あるいは医師による触診がほとんどであることが示されている(
2,
3)。欧米では、ルーチンの検査として行われる画像検査は胸部X線と超音波検査であることが多く、所属リンパ節転移の早期発見に超音波検査の有用性が示唆されている(
4)。一方、胸部X線撮影は一部の患者において肺転移発見の契機となりうるが、生存率の改善は証明されていない(
5,
6)。
Garbeら(
7)が実施した前向き臨床研究では病期別に6〜12カ月毎に診察、リンパ節の超音波検査、胸部X線、腹部超音波検査、血液検査などが施行された。その結果、転移発見の契機は診察47%、リンパ節超音波13.7%、胸部X線5.5%、腹部超音波3.7%、CT23.7%、血液検査1.4%、シンチグラフィー1.4%であったと報告されている。この研究ではCTはルーチンには行われていないが、リンパ節超音波検査で発見された転移の71%、診察での56%、CTでの30%が治療可能な早期転移であり、転移の早期発見群と晩期発見群では生存率に有意差が認められている。
CTに関しては、大部分が転移の疑われる症例にのみ施行された後ろ向き研究であり(
8,
9)、定期的検査によって生存率が改善するか否かは不明である。現時点では超音波検査の有用性は示唆されるものの、定期的な画像検査が生存率の改善につながることを示す明確な根拠は存在しない。
ただし、以上の報告はすべて欧米症例の解析結果であることに留意する必要がある。日本ではCTやMRIの普及率が高く、実際には欧米の報告よりも高頻度に施行されている。なお最近、メラノーマ病巣の発見に有用なpositron emission tomography (PET)が急速に普及しつつあり、それによる転移の早期発見が報告されている(
10)。PETでは従来の画像検査では検出できない超早期の転移巣が発見されることがあるので、予後の予測や治療方針の決定に貴重な情報を提供するかもしれない。これらの画像検査の有用性に関しては今後、前向き研究によって検証されることが望まれる。