推奨文:光線力学的療法については症例報告レベルのエビデンスしか存在せず、再発率や生存率を外科的切除と比較したデータはみられない。したがって、その有益性は不明である。
解説:光線力学的療法(photodynamic therapy; PDT)は腫瘍親和性の光感受性物質を細胞内に取り込ませ、光化学反応により腫瘍細胞を選択的に死滅させる治療法である。表在性皮膚腫瘍に対しては5-アミノレブリン酸(ALA)外用と633nmのレーザー光の組み合わせによるPDTの有効性が報告されているほか、ALAを取り込んだ腫瘍細胞が蛍光を発することを利用して、腫瘍の存在範囲を確認する光線力学的診断が行われている(
1)。
乳房外パジェット病に対しては、手術不能例や他の治療後の再発例にPDTが試みられているが、いずれも後ろ向き研究や症例報告が中心であって(
2,
3,
4,
5,
6,
7,
8,
9)、外科治療と生存率を比較したランダム化比較試験はみられない。これらの報告のなかにはPDTにより完全奏効が得られたとする症例も含まれており、乳房外パジェット病の、とくに表皮内病変に対する有益性が示唆される。しかし、病巣辺縁などからの再発も報告されており(
5,
6,
9)、使用する光源や照射法に改善の余地があることが指摘されている(
9)。本治療法は、現時点では手術不能例などに対し、臨床試験としてのみ実施されるべきものである。