推奨文:有棘細胞癌の術後に定期的な画像検査を行うと、生存率が向上するという明らかなエビデンスは存在せず、その臨床的意義は不明である。むしろ、厳重な臨床的観察によってリンパ節転移を早期に発見するように努めることが重要である。
解説:有棘細胞癌(SCC)において定期的な画像検査が局所再発や所属リンパ節、遠隔転移の早期発見に寄与し、生存率が上昇するか否かを明らかにした報告は存在しない。
原発巣切除後の転移は、大半の症例において所属リンパ節に生じ、リンパ節転移を伴わずに血行性転移をきたすことは極めて稀である。またリンパ節転移は、60−80%の症例では2年以内に発見されると報告されている(
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2)。したがって、初回手術時にリンパ節郭清を行わなかった症例については、所属リンパ節までの転移であれば、根治的郭清術が可能な場合が少なくないので、厳重な臨床的観察による早期発見が必要となる。
リンパ節転移を起こしやすい原発巣側の因子として、再発、組織所見(深部への浸潤、神経周囲浸潤、分化度)、原発巣のサイズ(2cm以上)、解剖学的部位(耳、口唇、手足、粘膜部)、宿主側の因子として免疫不全が報告されており、経過観察を行う上で参考になろう(
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8)。
以上より、SCCの原発巣切除部における再発、所属リンパ節や遠隔転移、新たな病変の早期発見のために、定期的な画像検査の意義は低いと考えられる。むしろ、患者の訴えを良く聞き、原発巣部と所属リンパ節領域を丁寧に診察し、最後に特に日光露出部に新生病変がないかを観察することが重要である。また患者自身による身体検索の教育も併せて実施すべきである。