SCC-CQ3
有棘細胞癌の原発巣は病巣辺縁から何mm離して切除すべきか
推奨度:B
推奨文:原発巣は最低限4mm離して切除する。高リスク病変(解説および別表参照)の場合は6mm〜10mm離して切除する。
解説:有棘細胞癌(SCC)の局所再発率という観点から切除範囲の評価を行っているシステマティック・レビューおよびランダム化比較試験(RCT)は存在しない。各国のガイドラインでは、Brodlandらの論文(1)が切除範囲を設定する根拠として挙げられることが多い。この研究はMohs手術に基づく症例集積研究であり、111症例141個の皮膚原発性の浸潤性SCCを対象として、術後15カ月間観察している。著者らは、腫瘍の大きさ、組織学的分化度、部位、浸潤度などを考慮して、切除範囲と消失率との関連を検討した。その結果、切除マージンは最低限4mm必要であり、さらに径2cm以上のもの、組織学的分化度がgrade2以上のもの、ハイリスク領域(頭部・耳・眼瞼・鼻・口唇)のもの、皮下へ浸潤しているものについては、6mmの切除範囲が必要であると結論づけている。
 英国のガイドライン(2)では、径2cm未満で低リスク、境界明瞭なSCCは4mmの切除範囲により95%の症例で完全に切除出来るとしている。より大きな腫瘍、組織学的にBroderのgrade2以上、皮下まで進展したもの、リスクの高い部位(頭皮・耳・眼瞼・鼻・口唇)では6mm以上の切除範囲を推奨している。
 オーストラリアのガイドライン(3)では、直径2cm未満の高分化のSCCであれば、切除範囲4mmで95%の症例で適切に切除出来るとしている。径2cm超の大きなSCCには1cmまでの切除範囲が必要となり、より大きなものはさらに広い切除範囲を要するとしている。
 米国National Comprehensive Cancer Network (NCCN)のガイドライン(4)では、SCCを低リスク群と高リスク群に分け(別表)、切除範囲は低リスク群では4〜6mmとし、高リスク群のうち体幹・四肢(L領域)では1cm、それ以外のものはMohs手術かCCPDMA (complete circumferential peripheral and deep margin assessment with frozen or permanent section)を推奨し、特に切除範囲を定めていない。
 以上より、2cm未満で分化度や発生部位においてリスクの低い場合の切除範囲は最低限4mmであり、よりリスクの高い場合は6mm以上1cmまでの幅の中で判断すればよいと考えられる。もちろん切除標本における詳細な断端の評価が必須であり、治癒率を高めるためにはより大きな切除範囲が必要となる場合があることも留意すべきである。なお、NCCNのガイドラインでは、SCC周囲の紅斑は腫瘍に含めて切除範囲をとるように記載されている。