解説:所属リンパ節転移を生じていない有棘細胞癌(SCC)の治療成績は良好であることから、リンパ節転移の有無が重要な予後因子であることが示唆される。しかし、 欧米のガイドラインやレビューで予防的リンパ節郭清の有益性について言及しているものはない。
欧米諸国におけるSCC患者の5年生存率はいずれも90%以上であり、予後のよい悪性腫瘍と認識されている。原発巣治療後に転移を起こすのは全体のおよそ1-5%で(
1,
2,
3)、そのうち85%程度が所属リンパ節への転移である。原発巣の浸潤が深部に及び、周囲組織との境界が不明瞭であるものは所属リンパ節転移のハイリスクグループと考えられるが、どのような条件を満たせば予防的リンパ節郭清の適応となるのかはわかっていない(
4)。
わが国において、1987-1994年に27施設で登録された1082例を追跡したところ、5年生存率が病期Iは92%、病期IIは82.6%であったと報告されている(
5)。また病期IIIのうち所属リンパ節転移がみられた症例の5年生存率は48%と低いので、治療成績の改善には、この群に属する症例の治療法を確立することが急務であろう。しかし、この報告では臨床的にリンパ節腫脹のみられない時期に予防的リンパ節郭清を行った群と、リンパ節転移が明らかになった後に根治的リンパ節郭清を行った群の生存率の比較はなされていない。
以上より、予防的リンパ節郭清と生存率との関連は十分に研究されておらず、その臨床的意義は不明である。したがって現時点では、予防的廓清は推奨できない。