推奨文:手術が困難な有棘細胞癌の進行原発巣や所属リンパ節転移に対して化学療法は比較的高い奏効率を示し、また症状緩和に寄与することがあるので有益である。ただし遠隔転移巣に対する有益性は不明である。
解説:有棘細胞癌(SCC)の進行原発巣と所属リンパ節転移に対しては、化学療法が比較的高い奏効率を示し、症状緩和に寄与するという複数の症例集積研究が存在する。ただし、少数例についての報告がほとんどである。
Ikedaらは(
1)、86例のSCCにpeplomycin sulfate単剤を投与し、奏効率61.6%(完全奏効23%、部分奏効38%、anyTN0M0で68.5%、 anyTN1M0で25%、 anyTanyN M1で10%)の効果をえている。Guthrieらは、cisplatinとadriamycinを中心とする多剤併用療法にて奏効率58%(12例中、完全奏効4例、部分奏効3例)(
2)、Sadekらは、腫瘍径が数cm以上の大型のSCC原発巣に対して、cisplatin、5-fluorouracil、 bleomycinの併用療法を実施し、84%(13例中、完全奏効4例、部分奏効7例)の奏効率をえている(
3)。また池田らは、CPT-11単剤で39.4%の奏効率(2CR+11PR/33:原発巣38.5%,
リンパ節転移60%、肺転移33%)がえられたと報告している(
4)。
一方Burrisらは、手術、放射線療法、全身化学療法の適応のないSCC症例に対し、局所注入によるcisplatinとepinephrineの併用療法を実施し、奏効率38%(12CR+3PR/32病巣)を得たと報告し、緩和目的での使用を勧めている(
5)。
以上より、SCCに対し、化学療法は根治的手術が困難か、一期的な手術では整容的あるいは機能的に受容できない問題を生じるような進行原発巣や所属リンパ節転移に対して、症例を適切に選択して施行すれば、有益であるといえよう。縮小した原発巣やリンパ節転移巣を外科的に切除することにより、長期生存が得られることもある(
3)。しかし、遠隔転移巣に対して化学療法を実施すると生存率が向上するか否かのデータはなく、その有用性は不明である。また、術後補助療法としての化学療法の意義についてもエビデンスは存在しない。