解説:有棘細胞癌(SCC)の多くは原発巣にとどまり、手術療法を中心とした治療にて約90%の症例が治癒する(
1,
2)。しかし、機能面や整容面から外科的手術が望ましくないと判断される症例や、神経周囲浸潤例、局所進行期例に対しては、根治的放射線療法が考慮される(
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2,
3)。
早期例や腫瘍径の小さいSCCに対する放射線療法の成績は良好で、手術と概ね同等の成績が報告されており90%の症例で局所制御が得られる(
2,
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6)。しかし、頭頸部領域原発で耳下腺に浸潤した症例や、リンパ節転移や神経周囲浸潤を来した症例に対する放射線療法の生存率は17〜46%と不良である(
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9,
10)。
根治的放射線治療としての至適照射範囲や照射スケジュールに関しては統一見解がないものの、周囲正常組織の耐容線量を考慮し、50〜70 Gy/20〜35回程度の線量が用いられる(
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11)。かつて用いられていた表在X線装置は本邦では現在はほとんど使用されず、電子線照射が主流となっている。電子線を用いた放射線療法は表在X線装置を用いた治療と同等の成績が得られることが示されている(
11)。SCCの所属リンパ節転移は1〜5%と稀であるので、通常の場合は所属リンパ節を含めた照射野を作成することは不要と考えられる。しかし、頭皮、耳、鼻、口唇部などの病巣、熱傷や慢性潰瘍を発生母地とした病巣、再発病巣などでは所属リンパ節転移を生じることがあるため、症例毎に照射範囲が検討される(
12)。治療計画にあたっては皮膚科医と放射線腫瘍医の綿密な連携が重要である。