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会員からのメッセージ

■ 研究の現場から

研究は楽しい

天谷 雅行(慶應義塾大学)

私が研究を始めた頃、天疱瘡における自己抗体が結合する抗原の正体は不明でした。そして、米国に留学した時に与えられたテーマが、天疱瘡抗原のcDNAクローニングでした。培養表皮細胞からcDNAライブラリーを作成し、大腸菌に融合蛋白を発現させ、患者血清を用いてスクリーニングするという方法で実験を開始しました。ところが、1年以上たってもまだとれませんでした。ボスには、プロジェクトを諦めることも示唆されました。しかし、私は諦められませんでした。少し改良した方法でもう一度スクリーニングしてみました。すると、その2ヶ月後の1990年2月14日のバレンタインデーに本物の尋常性天疱瘡抗原蛋白のcDNAを単離することができました。塩基配列を決めてみると、天疱瘡抗原はカドヘリンというカルシウム依存性の細胞間接着因子の新しいメンバーで、デスモゾームに存在するデスモグレインということがわかりました。後に、命名法が整理されて、尋常性天疱瘡抗原はデスモグレイン3、落葉状天疱瘡抗原はデスモグレイン1であるということになったのです。
研究がどのようなものなかをイメージするのは難しいと思います。大切なことは自分で一度は研究をしてみることです。そして、自分の手のひらの中で世の中の誰も見ていないことが起こることを体験することです。この楽しさを知らずに一生を終えるのはあまりにももったいないと思います。

あなたの今日の発見が明日の教科書を書きかえる

山本 明美(旭川医科大学)

皮膚科は臨床と研究が非常に近い分野です。多くの皮膚科医がこのふたつを両立しています。診療ガイドラインにそって診断、治療するだけで医師としての人生を終わっていいですか? もしあなたに明日の医療をより良いものにするための能力とチャンスがあるとしたら、挑戦してみるべきではないでしょうか? 皮膚科には臨床の現場の疑問を自らの研究によって解決できる可能性があります。
私は研修医時代に今までの教科書に記載されているどの病型にもあてはまらない変わった角化症の家系に遭遇しました。当時原因は分からずじまいでした。釈然としないまま国内外に留学するとともに臨床経験もつみ、10年以上経って、再びその家系の原因を調べるチャンスが巡ってきました。その10年は角化に関与する多くの分子が急速に明らかになっていった時期でした。そのなかの一つがロリクリンという分子で、よろいという意味のロリカから命名されました。患者さんの症状が手足に強く出ていることと、ロリクリン分子が手足に多く発現していることからもしやと思ってしらべてみると遺伝子変異が見つかりました。この病気は今の教科書には私たちが命名したロリクリン角皮症という新しい病名で記載されています。
さあ、あなたのこれからの人生を考えてみてください。教科書の内容を覚える側の医師で終わるのか、教科書を書き換えて医学の進歩に関わっていける医師になるのか。皮膚科には後者になれる大きなチャンスがあります。

■ 臨床の現場から

五感を最大限に生かせ!
―様々な疾患のゲートキーパーたる皮膚科医―

椛島 健治(京都大学)

私たちは、相手の表情をみながら日々コミュニケーションを行っています。しかし「表情」というのは、実はその人の「皮膚」に他ならず、それ故皮膚は日常生活と密接に繋がっています。また、例えばSLEの患者さんは、自身の頬部の赤みを蝶形紅斑と思って膠原病内科に外来受診するのではなく、ほっぺが赤くなったことを主訴に皮膚科に受診されるわけです。そのため皮膚科医は、患者さんの日常生活と関わりあいながら、かつ様々な疾患のゲートキーパーとしての重要な役割を担うことになります。
一方、近年医学の進歩が急速に進んできていますが、そのほとんどは視覚の情報を得るための技展はその典型といえます。ところが皮膚科では、病変を経時的かつ詳細に観察することが可能です。その際には視覚のみならず触覚や嗅覚などのあらゆる五感を駆使できます。従って自身の診断の正しさや治療効果などを極めて客観的に評価できます。これは他科にない皮膚科だけの特権と言えるでしょう。
また、老若男女問わず全ての人が診察対象であり、問診、視診、病理診断、内科的治療、外科的手術、化学療法にわたり疾患の診断から治療までの全てを自身で責任をもってフォローすることができるのも皮膚科の醍醐味の一つです。
様々な疾患のゲートキーパーとしての皮膚科という専門領域に、臨床研修医の諸氏が興味を抱いてくれることを期待したいと思います。

皮膚科医は皮膚をみられる内科医、
皮膚軟部を熟知した外科医

沢田 泰之(東京都立墨東病院)

皮膚科は全身をみる数少ない診療科です。皮膚科=足白癬、アトピー性皮膚炎、美容などのイメージがありますが、天疱瘡、重症薬疹など皮膚科医が診なければ命を救えない重篤な疾患もあります。膠原病も重要な皮膚科の疾患です。強皮症、ベーチェット病や一部の皮膚筋炎、SLE、血管炎は皮膚科医でなければ診断できません。糖尿病,甲状腺疾患、トキシックショック症候群、内臓悪性腫瘍など様々な疾患を皮膚から診断することができます。
皮膚科医は外科医でもあります。皮膚腫瘍は患者・家族に何が大切かを考えて、正確な診断のもとに手術をするには腫瘍や皮膚を熟知していなくてはなりません。皮下・軟部の疾患も皮膚科にとっ て重要な疾患です。腫瘍,静脈瘤だけでなく、壊死性筋膜炎,フルニエ壊疽などの軟部重症感染症の診断は熟練した皮膚科医でなければ困難です。糖尿病性壊疽や壊死性筋膜炎などの肢切断を回避する治療も、患者ひとりひとりの全身状態、皮膚軟部の状態を熟知した皮膚科医でなければできない治療です。
皮膚科を「絵合わせ科」だと思っていませんか,皮膚科は全ての感覚を駆使し、「考える診療科」です。検査がいくら進歩しても医師が異常を感知できなければ、診断し治療することはできません。皮膚をみて、患者全体を見通す、それが皮膚科の醍醐味です。
そんな皮膚科医にあなたもなってみませんか。

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