解説:一度再発した基底細胞癌(BCC)は初回治療例よりも50%以上高い再発リスクを有するとされる(
1)。再発をきたしやすいのは、病変の進展が臨床的に不明瞭、活動性の高い組織型、瘢痕組織での不規則・多発性の浸潤、などである。
再発性BCCを対象とした臨床試験としては、外科的切除とMohs手術とのランダム化比較試験が行われている(
2)。術後18ヶ月時点における再発率は外科的切除群で3%、Mohs手術群0%で、統計学的な有意差には至っていない。また、非ランダム化比較試験ではあるが、再発性BCC97例を対象として外科的切除、Mohs手術(固定法)、放射線療法の比較を行った試験では、5年以上の観察期間におけるそれぞれの再発率は5、12、11%と報告されている(
3)。オーストラリアにおける数千例規模のMohs手術データベースによれば、再発性BCCに対するMohs手術の5年再発率は4%である(
4)。
切除以外の治療法による症例集積研究としては放射線療法(
5,
6)、凍結療法(
7)、光力学的治療(photodynamic therapy)(
8)によるものがある。放射線療法では中央観察期間57ヶ月での再発率9.8%(
5)、平均42ヶ月で8.8%(
6)と報告されている。凍結療法では再発率3.6%との報告があるが、その約半数の症例は2年以内の観察期間であるため、他の治療法との比較はできない(
7)。また、放射線治療後の残存・再発に対して光力学的治療を施行した試験での完全奏効率は80%以上であるが、最も重要なアウトカムとしての再発の有無を評価するには観察期間が不十分である(
8)。これらはいずれも欧米からの報告であり、再発に至った前治療の内容としては電気凝固術、放射線療法、凍結療法が多い。本邦においてはBCCの初期治療としてはほぼ外科的切除のみが行われているのが現状であるため(
9)、これらの背景因子の違いを考慮する必要がある。
以上を総合すると、再発性BCCに対しては外科的切除かMohs手術が推奨されるが、本邦においては種々の理由でMohs手術の導入は困難な面があるので、本邦ガイドラインとしては外科的切除を第一選択の治療法として推奨する。しかし高齢、合併症等の理由で手術が困難な症例に対しては、放射線療法、凍結療法等の非手術的治療の適応を考慮してもよい。