解説:基底細胞癌の治療アルゴリズムにおいて最も重要な部分は、高リスク症例をどのように定義するかということである。それによって治療法の選択肢が分かれ、切除マージンの設定にも影響する。基底細胞癌による死亡は極めて稀なことであるので、基底細胞癌における‘リスク’というのは局所再発のリスクを意味する。再発危険因子を統計学的に検討した報告は数多くみられ、臨床的因子として腫瘍径(
1,
2,
3,
4)、部位(
1,
2,
3,
5)、再発歴(
1,
2,
6)、性別(
1,
2,
5)、年齢(
1,
2)、多発病巣(
7)、発生母地(放射線瘢痕、色素性乾皮症、基底細胞母斑症候群など)(
7)、組織学的因子としては組織型分類(
8,
9)、神経周囲浸潤(
10)が挙げられている。比較的多数例に基づく報告の内で共通して挙げられている因子は、腫瘍径、部位、再発歴、組織型分類、神経周囲浸潤である。腫瘍径と部位に関してはニューヨーク大学の数千例規模のデータベースによる一連の研究があり(
2,
3,
4,
5)、米国の
NCCN*ガイドラインもそれに基づいて高リスク症例を定義している。すなわち、腫瘍径は6、10、20mmを境界値として低、中、高リスクとし、発生部位については体幹・四肢を低リスク、頭・頬・前額・頸部を中リスク、頬と前額以外の顔面全て・外陰・手・足を高リスク部位とし、両因子の組み合わせで分類をしている(
別表)。組織型については報告者によって様々な分類法があるが、Sextonらにより提唱された増殖パターンによる分類法(
11)が予後の観点からは汎用されており、NCCNガイドラインでも結節型、表在型は低リスク、それ以外の組織型(斑状強皮症型、硬化型、浸潤型、微小結節型)を高リスクとして扱っている。神経周囲浸潤は、オーストラリアの1万例を超えるMohs手術データベースでは発現頻度2.7%と稀な現象ではあるが、それらの5年再発率は7.7%と有意に高いことが示されている(
10)。
*:National Comprehensive Cancer Network