BCC-CQ5
臨床的に基底細胞癌が疑われる病変を、診断確定のために生検すべきか
推奨度:A
推奨文:詳細な臨床的評価とダーモスコピーによっても基底細胞癌と診断を確定できない病変については、生検を実施して、診断を確定することが強く推奨される。しかし、臨床所見、ダーモスコピー所見にて診断を確定できる場合には、生検を実施する必要はない。
解説:基底細胞癌(BCC)が疑われる病変については、詳細に臨床所見を評価することが大切である。BCCにはさまざまな臨床病型が存在するが、日本人のBCCの基本的臨床像は、表面が角化しない、平滑で透明感のある灰黒色の結節である。潰瘍辺縁部に小結節が配列することもある(pearly border)。蛇行状の毛細血管拡張を高率に伴うことも診断の参考になる。鑑別疾患としては、メラノーマ、色素細胞母斑、脂漏性角化症などがあげられる。また、BCCは多発することや家族性のものもあるので、病歴聴取と全身皮膚の診察も必要である(1,2,3)。
  無作為抽出した一般大衆を熟練皮膚科医が診察した場合の皮膚癌の診断精度は59〜65%である(4)。アメリカの大学病院皮膚科医による臨床診断精度は70%であり、臨床診断のみでは診断の難しいケースがある(5)。
  最近、導入されたダーモスコピーはBCCの診断にもきわめて有用である(CQ3参照)。臨床所見、ダーモスコピー所見から基底細胞癌の診断が確定的な場合には、生検を実施する必要はない。しかし、これらの臨床情報のみでは診断を確定できない病変は積極的に生検し、病理組織学的に診断を確定する。BCCは原則として転移しないので、部分生検を行っても予後を悪化させる危険性はまったくない。