MM-CQ10
メラノーマの原発巣は、肉眼的な病巣辺縁から何cm離して切除すべきか
推奨度:A
推奨文:メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は、in situ病変では3〜5mm、tumor thicknessが2mm以下の病変では1cm程度、tumor thicknessが2mmを超える病変は2cm程度とする。
解説:メラノーマ原発巣の切除範囲を広く取ることにより、局所再発の減少や生存率の改善などが期待されるが、他方、植皮が必要となったり、術後合併症が増加する可能性が高まる。適切な切除マージンを決定するために、さまざまな設定で症例対照研究やランダム化比較試験が行われてきた。
 2002年に発表されたメタアナリシスにおいて、1-2cmマージンと3-5cmマージンでの切除が比較され、5年生存率および5年無病生存率に有意差のないことが示された(1)。別のメタアナリシスでは、原発巣の最大切除マージンは2cmを超えないことが望ましく、2cmと1cmを比較したランダム化比較試験は行われていないので、切除マージンは2cmが望ましいと結論付けている(2)。その後、tumor thicknessが2mm以下の症例では、切除マージンと生存率の間に相関関係はなく、原発巣の切除マージンを1cm以上とすれば、局所再発率にも影響のないことが示された(3)。
  in situ病変については、3mmマージンと3mmを超えるマージンでの比較において局所再発率に有意差がないことより、3mmマージンでの切除が推奨される(4)。しかし、顔面のin situ病変で最大径が2cm以上の場合は3mm以上のマージンでも再発することがある(4)。
 以上より、1)in situ病変(顔面で最大径が2cm以上の病変を除く)の切除マージンは3〜5mm、2)tumor thicknessが2mm以下の切除マージンは1cm、3)tumor thicknessが2mmを超える病変の切除マージンは1〜2cmで、可能ならば2cmに近づける、とすることが推奨される。
 なお深部の切除断端は、侵入の深さに応じて決定する。侵入が真皮内までの病変は皮下脂肪組織全層を含めて切除する。下床の筋膜を付けて切除すると予後が改善するというデータはなく、筋膜の切除に関しても結論は出ていない(5,6)。