解説:メラノーマ転移巣に対する放射線療法は、転移部位によって治療効果に差があるとされているが、骨や中枢神経などの転移巣では約半数の症例で症状緩和が期待できる(
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4)。
脳転移患者については予後を考慮する必要があり、予後良好因子として単発性脳転移、他臓器転移がないこと、全身状態が良好であることなどが、他方、予後不良因子としては多発性脳転移、肺や肝臓への転移、頭頸部原発などがあげられる(
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6)。予後良好例では放射線療法を行うことで比較的長期間、自立した生活が可能となるが、治療に伴う有害事象には注意が必要である(
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9)。単発性脳転移例や脳以外に活動性病変を認めない数個以下の脳転移例については手術療法との優劣を評価する必要がある。定位照射によって約90%の患者で腫瘍の増大が抑えられ、約半数の患者で腫瘍の縮小が認められる(
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10)。なお、手術や定位照射後の全脳照射は脳内再発の頻度を下げる可能性はあるが、生命予後の改善は望めず、予後良好例でも平均生存期間は約8か月にとどまる(
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10,
11)。
他方、予後不良例には症状緩和のための全脳照射が行われ、39〜76%の患者で症状が改善する(
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13)。再照射については、症状改善が約半数の症例で示されるものの、遅発性毒性を考慮して慎重に症例を選択すべきである。現時点で脳転移例に対する全身的化学療法の有用性は確立されていない(
6)。
骨転移の疼痛緩和を目的とする放射線療法は、他の癌腫の場合と同様のスケジュールで行われる。1回線量を4 Gy以上にすると症状緩和率が高いとの報告もみられるが、悪性黒色腫の骨転移例に特有の照射スケジュールは確立されていない(3,4,14)。一般に、1回線量3 Gy、計10回、総線量30 Gy程度の照射とすることが多い。また、予後不良例では8 Gyの1回照射や、1回4 Gyで総線量20 Gy程度とする照射スケジュールも用いられる。照射スケジュールによって症状改善率に差はないとされ、疼痛緩和効果は50〜80%の患者で認められる(
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14)。
皮膚やリンパ節のみの転移例は予後良好とされ、放射線療法により59〜79%の症例で腫瘍の縮小効果が見られる(
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14)。生物学的知見からは1回線量を4 Gy以上にした方がより効果的と考えられるが、臨床データからは一定の見解はえられていない(
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3,
4)。温熱療法との組み合わせも試みられるが治療効果は不定で、本邦では一般的な治療法とはなっていない。