推奨文:外尿道口周囲、腟壁から膣前庭部、および肛門周囲にパジェット病変を認める症例はそれぞれ膀胱癌、子宮癌・膣癌、直腸肛門癌などの皮膚浸潤によるパジェット現象のことがあるので、膀胱鏡、子宮鏡、直腸肛門鏡などによる精査を行うべきである。
解説:パジェット現象とは、皮膚に隣接する臓器の癌が上皮内を移動して表皮へ到達し、表皮内癌の所見を呈することをいう。膀胱移行上皮癌は外陰部に(
1,
2)、子宮癌・膣癌は膣前庭部などに(
1)、直腸肛門癌は肛門周囲にパジェット現象を生じることが知られている(
1)。パジェット現象の臨床および病理組織像は皮膚原発の乳房外パジェット病と酷似する。乳房外パジェット病と内臓癌のパジェット現象では、治療法の選択および予後が著しく異なるので、両者を鑑別することが重要である(
3)。乳房外パジェット病の多くは表皮内癌であり、手術などにより良好な予後が得られるが、パジェット現象の多くはその臓器に浸潤癌が存在しており、予後不良なことが少なくない。最近ではGCDFP15およびCK20の免疫組織学的検索により、乳房外パジェット病と内臓癌のパジェット現象を組織学的にかなりの精度で鑑別できるようになったが(
4,
5,
6,
7)(
CQ2参照)、最終的にはパジェット現象の確定診断には隣接臓器癌の存在を証明する必要がある。
外尿道口周囲、腟壁から膣前庭部、肛門周囲などに顕著な病変が認められ、膀胱癌、子宮癌または直腸肛門癌などのパジェット現象が疑われる症例に対しては膀胱鏡、子宮鏡、直腸肛門鏡などの検査を施行すべきである(
3)。