SCC-CQ1
紫外線防御を行うと有棘細胞癌の発生率が減少するか
推奨度:BおよびC1
推奨文:白人ではサンスクリーン剤の使用によって有棘細胞癌の発生率が減少すると報告されているので、日本人の中でも色白で色素沈着を起こしにくいスキンタイプの者では同等の効果が期待される(推奨度:B)。しかし日本人の大半を占めるそれ以外のスキンタイプの者に対する紫外線防御の有益性は不明である(推奨度:C1
解説:有棘細胞癌(squamous cell carcinoma; SCC)の発生に強く相関すると考えられている因子は、紫外線に対する個人の防御能を反映するスキンタイプ、日焼けの程度、年齢である(1)。日光紫外線への暴露で容易に日光皮膚炎(皮膚の発赤)を起こすが、色素沈着は起こりにくいスキンタイプを持つ者はSCCを発症しやすい。また、水疱を起こすような強い日焼けを繰り返した者の方が癌を生じやすい。オーストラリアで生まれ育った群と途中で他国から移住した群とを比較すると、SCCの発生が前者は後者の3倍多いことが示されている。このことより、若年者における過度の日光皮膚炎がSCCの発生に強く関与していることが示唆される(2)。
サンスクリーン剤による予防効果については、オーストラリア人を対象として、SCCの発生をアウトカムとする1件のランダム化比較試験(RCT)および日光角化症をアウトカムとする2件のRCTが実施されている。SCCの発生をアウトカムとする試験では、評価対象者1383人の内、サンスクリーン剤の使用によって発生を39%減少させることが、また、日光角化症については、それぞれ評価対象者431人および1116人の内、38%、24%減少させることができたと報告されている(3,4,5)。
しかしながら日本人について、SCCと日光紫外線との関係を示す信頼できるデータは乏しい。緯度と皮膚がん発生との関係については、兵庫県加西市と沖縄県伊江島における日光角化症の罹患率を比較した研究がある。人口10万人当たりの罹患率は加西市が144.2人、伊江島が696.8人であり、沖縄の日光角化症の罹患率は兵庫の5倍であると報告されている(6)。また、日本人のSCCの60%は日光露出部に発生すると報告されており、白人程ではないが、その発生に日光紫外線が関与していると考えられる(7)。
以上より、日本人の中で色白でサンタン(日焼けで黒くなること)をおこしにくいスキンタイプの者や小児は、サンスクリーン剤を使用し、過度の日光暴露を避けることはSCCの発生予防に役立つ可能性があり、有益と言えよう。しかし、日本人の大半を占めるそれ以外のスキンタイプの者に対する紫外線防御の有益性は不明である。