推奨文:メラノーマ原発巣の部分生検により局所再発率やセンチネルリンパ節転移の陽性率が有意に上昇するという証拠はないので、全切除生検が不可能な場合には、部分生検を行ってもよい。しかし、頭頚部原発のメラノーマ患者では部分生検によって生存率が低下する危険性があるので、注意を要する。
解説:メラノーマ原発巣について、全切除生検(excisional biopsy)すると単純縫縮が不可能な大型病変の場合や、顔面や手掌・足底などの病変で単純縫縮が難しい場合などに、診断とtumor thickness確定のため、部分生検を選択してよいか否かが問題になる。
部分生検のリスクとして、組織診断の精度低下が挙げられる(
1,
2)。Tumor thicknessが低く見積もられて、拡大切除時のマージンが不足し、追加切除が必要となることや、追加手術としてのセンチネルリンパ節生検が必要となるおそれもある。
部分生検を行うことによりメラノーマ細胞が深部に押し込まれて、リンパ節転移や遠隔転移を生じる危険性が高まることが懸念される。この点については、全切除生検群と部分生検群の間に5年生存率(
3)、局所再発率と死亡率(
4)、再発とメラノーマ関連死亡(
5)、センチネルリンパ節の転移陽性率(
6)において有意差がみられなかったと報告されている。したがって、全切除生検が不可能な場合には、部分生検も可とみなされる。しかしながら、頭頚部原発の症例については多変量解析にて、部分生検が生存率を低下させたとする報告がみられる(
7)。
全切除生検に関して、切除する範囲と予後との関係を検討した研究はないが、一般的には2mm程度の側方マージンとし、深部は皮下脂肪組織まで切除することが推奨されている。なお、切除生検から拡大切除施行までの待機時間の長さの違いは生存率と再発率に影響しないと報告されている(
8)。また、切除生検でtumor thicknessを確認してから拡大切除を行う方が、一期的に根治的拡大手術を行うよりも生存率と再発率が優れていたという報告もある(
9)。