Paget-CQ4
乳房外パジェット病の原発巣は何cm離して切除すればよいか
推奨度:C1
推奨文:乳房外パジェット病の原発巣を完全切除するのに必要な皮膚側の切除範囲(切除マージン)に関する信頼性の高いエビデンスは存在しないが、病巣の肉眼的境界が明瞭な部分やmapping biopsyで陰性と判定された部位については1cm程度の切除マージンでよいと考えられる。その他の境界不明瞭な部位については、3cm程度のマージンが推奨される。
解説:解説:乳房外パジェット病を3〜4cmのマージンで広範囲切除し、病理組織学的に検討したところ、腫瘍細胞は肉眼的境界を越えていたという報告や(1)、切除マージンを全周にわたって3cm以上とった5例では切除断端に腫瘍細胞を認めなかったが、切除マージンが全周または一部において3cm未満であった5例中4例では切除断端に腫瘍細胞が認められたという報告(2)がある。さらに、17例の乳房外パジェット病に対し、肉眼的辺縁から3cmおよび6cm離れた部位をmapping biopsyしたところ、それぞれ4.4%(6箇所/136箇所)、0.7%(1箇所/136箇所)の頻度でパジェット細胞が見出されたとの報告がある(3)。以上より、本腫瘍には3cm以上の切除マージンが必要とする見解がある。さらにまた、初発病変あるいは(Mohs手術以外での切除後に)局所再発した乳房外パジェット病に対し、Mohs手術を施行したデータから、腫瘍細胞を消失させるのに必要なマージンの平均は2.5cm、97%の症例で組織学的に腫瘍消失が得られるためにはマージン5cmが必要とする報告もある(4)。このように、乳房外パジェット病の切除マージンは3cm以上必要とする考え方が優勢であった。しかし、局所再発率を低下させるのに必要な皮膚側切除マージンに関する信頼性の高いエビデンスは存在しない。
  最近、1cmの切除マージンで切除された境界明瞭な46例の乳房外パジェット病において、肉眼的境界と組織学的境界の誤差は0.334±1.183mm (-3.0〜+5.4mm)であり、全例において局所再発がみられなかったという報告がなされた(5)。この報告では、清拭や適切な外用剤塗布などの術前処置を行うことにより病変の境界が明瞭となり、狭い範囲での切除が可能になると主張されている。
  以上より、病巣の肉眼的境界が明瞭な部分やmapping biopsyで陰性と判定された部位は1cm程度の切除マージンとし、その他の境界不明瞭な部位については3cm程度のマージンとすることが推奨されよう。なお、粘膜側や深部マージンに関しては参考となる論文は存在しない。現実には、粘膜側では排尿・排便機能の温存を考慮して切除マージンが決定されることが多く、深部マージンについては、パジェット細胞が皮膚付属器上皮に沿って増殖することがあるため、筋膜レベルでの切除が推奨される。