解説:ダーモスコピー(DMS)の有用性を検討した2件のメタアナリシスにおいてDMSがメラノーマ(MM)(tumor thicknessが1mm未満の早期病変が大多数を占める)の診断に有用であることが示されている。Bafountaらによると、MMの臨床所見のみでの診断とDMSを用いた診断を比較した8文献を検討し、DMSによる診断の感度が0.75-0.96、特異度が0.79-0.98であり、オッズ比(odds ratio)はDMS診断76(95%CI:25-223)、臨床診断16(95%CI:9-13)となり、推定尤度比(estimated positive likelihood ratio)はDMS診断が9(95%CI:5.6-19.0)、臨床診断が3.7(95%CI:2.8-5.3)であった。以上より、DMS診断が臨床診断に比べて有意に勝ると結論している(
1)。Kittlerらのメタアナリシスは1987-2000年の27文献(全9821病巣)を抽出し、DMSを用いると、用いない場合に比べ、MMの診断正確度accuracyが有意に向上し、対数オッズ比(log odds ratio)が4.0(95%CI:3.0-5.1)対2.7(95%CI:1.9-3.4)であること、この診断正確度はDMSの経験の有無に有意に依存することを明らかにしている(
2)。DMSの診断法について正規の訓練を受けることがDMSによる診断精度の向上には必須とされる(
3)。Carliらは、色素性病変の専門外来で913病変をランダム化して検討し、肉眼所見のみに比べて、DMS所見を加えて判定すると、MMの早期病変が効率的に検出できて、無駄な生検が有意に減少することを報告している(
4)。Haenssleらは、MMのハイリスク患者530人の7001個の異型母斑(atypical nevus; AN)を臨床所見、通常のDMS観察、ならびにデジタルDMS(ダーモスコピー所見をデジタルに記録、保存しておき、所見の変化を比較、検討できる機器を用いる方法)にて前向きに平均32.2ヶ月間経過観察した。この間に何らかの疑わしい所見を呈するようになった637病巣を切除したところ、うち53病巣(8.3%)がMMであったと報告している。この研究では、デジタルDMSによってMMの検出が17%向上し、18病巣はデジタルDMSの所見の変化のみによって検出できたという。とくに、familial atypical mole melanoma syndrome(ANとMMを家族性に多発する症候群)やatypical mole syndrome(ANを多発する者)といったハイリスク患者でのMM検出に有用であった。デジタルDMSはハイリスク患者でのANのfollow-upとMMの早期検出に役立つといえる(
5)。
日本人では掌蹠に好発する肢端黒子型メラノーマ(ALM)が最頻病型だが、このALMは、白人に多い表在拡大型メラノーマ(SSM)とはまったく異なるDMS所見を呈する。とくに皮丘平行パターン(parallel ridge pattern)という皮丘優位の帯状色素沈着がMMにおいて早期病変の段階から高率に認められる(感度86%、特異度99%)。この特異なDMS所見によってALMを早期病変の段階で検出、診断することが可能である(
6)。
以上より、DMSはこの診断法に習熟した者が用いれば、メラノーマの早期診断に大いに役立つといえる。