Q2どのような病型があるのですか?
表皮水疱症は表皮と真皮が解離する部位により、以下の4型に大別されています。
単純型表皮水疱症
表皮のいちばん下の層に並ぶ基底細胞内に裂隙が生じます。表皮の基底部を構成する基底細胞の骨組みに重要なケラチン5やケラチン14、プレクチンといったタンパクに生まれつき異常があり発症します。
水疱が手のひらや足の裏に限られている場合には最も軽症である“限局型”、全身に水疱やびらんが生じ、また、その水疱が環状に配列する場合には重症型である“ダウリング・メアラ型”が考えられます。“その他の汎発型”はその中間に位置します。単純型表皮水疱症では、裂隙が表皮内で形成されるため、水疱やびらんは傷あとを残さず治癒することが多いです。プレクチンに異常があった場合は、単純型表皮水疱症の皮疹に加え、遅発性の筋力低下や胃の出口である幽門部の閉鎖を合併することがあります。
接合部型表皮水疱症
表皮と真皮の接合部に裂隙が生じます。この接合部にはヘミデスモソームと呼ばれる表皮-真皮間接着装置が存在していますが、ヘミデスモソームを構成する17型コラーゲン、ラミニン332、α6β4インテグリンなどのタンパクの遺伝的な異常が原因となって起こります。
“ヘルリッツ型”はラミニン332が完全に欠損することにより発症します。生まれた頃から全身に水疱やびらんを形成し、次々と皮疹が出現します。“非ヘルリッツ型”はラミニン332の不完全な欠損、あるいは17型コラーゲンの完全欠損により発症します。頭部の脱毛や爪の変形、歯の異常などを伴います。“幽門閉鎖症合併型”はα6β4インテグリンの遺伝子変異により発症します。全身に水疱やびらんを認め、さらに胃の出口である幽門部の閉鎖を合併します。
栄養障害型表皮水疱症
表皮直下に裂隙が生じます。表皮と真皮の接合には、基底膜の係留線維と呼ばれる“いかり”のようなものが必要です。しかし、この係留線維を構成する7型コラーゲンに異常があった場合、表皮直下で裂隙が生じ、栄養障害型表皮水疱症を発症します。遺伝形式により優性栄養障害型と劣性栄養障害型に分類され、さらに、劣性栄養障害型は“劣性重症汎発型”と“劣性、その他の汎発型”に分かれます。
“劣性重症汎発型”は7型コラーゲンがまったく形成されない最重症型です。生後まもなく水疱やびらんが全身に繰り返し出現し、それらが治癒した後は傷あとを残します。手足の指はくっつき、棍棒状になります。口の中や口から胃までの食べ物の通り道である食道などの粘膜にも水疱やびらんが生じるため、食道が狭くなり、水や食べ物が飲み込みにくくなります。“劣性、その他の汎発型”では7型コラーゲンは減少しますが、少しは発現します。そのため“劣性重症汎発型”と比べて軽症です。これらの劣性栄養障害型表皮水疱症は生涯を通じて難治性のびらんを多発し、青年期以降に傷あとに皮膚がんを併発することが多いです。
“優性栄養障害型”は出生時から幼少時期にかけて発症し、肘や膝などの力が加わりやすい部位に水疱やびらんを生じ、これらの皮疹は治癒後に傷あとを残します。爪の変形や脱落も認めます。多くの患者さんは成長とともに症状が改善することが多いです。
キンドラー症候群
表皮基底細胞内や表皮直下など、様々な部位で裂隙が生じることが特徴的です。手足に水疱が生じ、全身の皮膚が薄く、色素沈着を伴ってくる(多形皮膚委縮)ことが多いです。また、日光などの光線に対し皮膚が過敏になることもあります。水疱形成は年齢に伴い軽快する場合や生涯を通じてほとんど出現しないこともあります。皮膚がんの発症率が上がるとの報告もあります。