Q5血管炎といわれる病気で代表的な疾患は何ですか?特に、皮膚に血管炎が見られる血管炎疾患は何ですか?
血管炎には様々な疾患があり、2012年腎臓、肺、心臓などの主要臓器の血管炎に焦点を当てるChapel Hill(CHCC 2012)の分類は広く活用されています。しかし、血管炎の最も好発臓器である皮膚に生じる血管炎疾患が十分な取り扱いがされていないため、CHCC2012分類を元に2018年皮膚科医の立場から見る皮膚限局性血管炎と皮膚に血管炎が見られる全身性血管炎疾患が整理され、新たな皮膚血管炎の命名法と分類(D-CHCC☆(Dermatologic addendum to the CHCC2012)が発表されました。
表1 D-CHCC2018の血管炎分類
血管炎疾患名と主な罹患血管 | 皮膚の血管炎の有無 | 皮膚に限局の有無 |
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高安動脈炎:大動脈とその主要な分枝の肉芽腫性動脈炎 | なし | なし |
巨細胞動脈炎(GCA):大動脈とその主要な分枝の肉芽腫性動脈炎 | あり、皮下組織の動脈炎 | なし |
結節性多発動脈炎:膠原病やANCA関連性のない中型動脈あるいは小動脈の壊死性動脈炎. 糸球体腎炎及び内臓の毛細血管、細静脈炎は見られないが、皮膚には細動脈炎を伴うことがある. | あり、皮下組織の動脈炎と真皮の細動静脈炎 | あり 皮膚に限局するものは皮膚動脈炎(皮膚型結節性多発動脈炎)である. |
川崎病:主に中型及び小動脈を侵す粘膜皮膚リンパ節症候群を伴う動脈炎 | なし | なし |
顕微鏡的多発血管炎(MPA):小型、中型血管を侵す血管炎、肉芽腫性炎症はない。 | あり、真皮の細動静脈炎と皮下組織の小動脈炎 | あり |
多発血管炎性肉芽腫症(GPA):肉芽腫性炎症を伴う小型、中型血管を侵す血管炎 | あり、真皮の細動静脈炎と皮下組織の小動脈炎 | あり |
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA):好酸球浸潤と肉芽腫性炎症を伴う小型、中型血管を侵す血管炎 | あり、真皮の細動静脈炎と皮下の小動静脈炎 | あり |
抗糸球体基底膜抗体病:糸球体と肺の毛細血管 | なし | なし |
免疫複合体性血管炎:小型血管炎(毛細血管、細静脈) | あり、真皮の細静脈炎 | あり |
クリオグロブリン血症性血管炎:小型血管炎(細静脈、時に細動脈) | あり, 主に真皮の細静脈炎 | あり |
IgA血管炎(Henoch-Schönlein紫斑病):小型血管炎(毛細血管、細静脈、稀に細動脈) | あり、主に真皮の細静脈炎 | あり |
低補体血症性蕁麻疹様血管炎:小型血管((毛細血管、細静脈、稀に細動脈)、 SLEの合併症が多い | あり、主に真皮の細静脈炎 | あり |
多様な血管を侵す血管炎:特定の血管を侵す傾向はみられず、全ての大きさと種類の血管を侵し得る血管炎 ・Behçet病:動脈と静脈とも侵される. ・Cogan症候群:内耳病変(聴覚障害、めまい)と炎症性眼病変(間質性角膜炎、ブドウ膜炎、上強膜炎)を伴い、大動脈をはじめとする様々な臓器の動脈が侵される. |
あり、真皮の細静脈炎と皮下組織の(血栓性)静脈炎 あり、皮下組織の動脈炎と真皮小血管炎 |
あり なし |
全身性疾患関連血管炎 ・膠原病関連血管炎(SLE,RA. SjS):中型、小型の動静脈炎、臓器として皮膚に生じる血管炎が最も多い. ・サルコイド血管炎:肺の肉芽腫性動静脈血管炎が多い. 皮膚、末梢神経の小血管も侵される. |
あり、真皮の細動静脈炎と皮下の小動静脈炎 あり、真皮の細動静脈炎と皮下の小動静脈炎 |
あり あり |
推定病因を有する血管炎 ・薬剤性、感染性、敗血性、自己免疫疾患、腫瘍随伴性(固定癌と造血性腫瘍):臓器として皮膚に生じる血管炎(細静脈、時に筋性動静脈)が最も多い. |
あり、真皮の細静脈炎が多い、時に皮下組織の動静脈炎 | あり |
皮膚の単一臓器に生じる血管炎 | 侵される皮膚血管 | |
・皮膚IgG/IgM免疫複合体性血管炎:全身性障害とクログロブリン血症を伴わない真皮小血管壁にIgG/IgMの沈着像 ・結節性血管炎(Bazin硬結性紅斑) ・持久性隆起性紅斑 ・高ガンマグロブリン血症性紫斑 ・正補体血症性蕁麻疹様血管炎 |
真皮の細静脈炎 真皮と皮下組織の肉芽腫性静脈炎 真皮の細静脈炎 真皮の細静脈炎 真皮の細静脈炎(血管壁のフィブリノイド変性をみない血管周囲性細胞浸潤と出血像を見ることが多いので好中球球性蕁麻疹や慢性蕁麻疹との区別が困難) |