国際活動

留学体験レポート:University of Bonn - 酒井貴史

2024年12月18日公開

大分大学医学部皮膚科学講座 酒井貴史

留学先

ドイツ・ボン大学

留学先と留学期間

2019年から2年間、ドイツのボン大学(University Hospital Bonn, Department of Dermatology and Allergy; Christine Kühne-Center for Allergy Research and Education (CK-CARE))で、Thomas Bieber先生のもと研究員として留学しました。

留学の経緯

私はもともと海外留学の希望は持っていませんでしたが、きさらぎ塾などを通じて、国内の研究仲間やメンターと色々話す中で、どうやら海外留学は面白いらしい、と刺激を受けたのがきっかけです。私は地方大学の研究者であったため、トップサイエンスには拘らず、本当に自身が興味のある分野、先生の元への留学を優先し、留学先を決めました。可能であれば留学先で習得した技術・知識を、帰国後に自身の大学で活用したいとも考えていたので、この選択が私にはとても合っていました。

留学先での仕事

はじめはアトピー性皮膚炎患者検体を利用した樹状細胞の研究を行っていましたが、新型コロナウイルスのパンデミックのため、検体が十分利用できなくなり、後半はアトピー性皮膚炎患者の巨大なデータベース、バイオバンクを利用した研究にシフトしていきました。最終的に、複数のプロジェクトに携わる機会が得られ、様々な仕事を経験することができました。具体的に、アトピー性皮膚炎皮疹部に出現する炎症性樹状細胞に対するJAK阻害剤の効果(J Allergy Clin Immunol. 2021 Jun;147(6):2202-2212.e8.)、アトピー性皮膚炎患者血中の脂質変化(Allergy. 2021 Aug;76(8):2592-2595; JID Innov. 2021 Dec 22;2(2):100092.)、アトピー性皮膚炎患者の骨異常とRANKLの関係(Allergy. 2021 Oct;76(10):3220-3223.)など、自身が専門とする分野の臨床プロジェクトに取り組み、publishされ、幸運だったと思います。

楽しかったこと

家族とともにドイツの自然とワインを満喫できたことは、私にとって大変幸せな時間でした。そして、ドイツに暮らす人たちの仕事、研究に関する考え方、ワークライフバランスは、私にとって大きな衝撃でした。ドイツの人たちは、自身の時間、家族の時間をかなり重視しているので、一見、全然働いていないようにも見えます。それでいて、優れた国力とサイエンスレベルを維持しており、ここでは書ききれませんが、成果を出すための有効な働き方、考え方について、深く学ぶことができました。私は日本にいる時と比べて随分抑えた働き方をしていたのですが、それでも「お前は働きすぎだ!早く家族の元へ帰れ!」と、同僚から何度怒られたか分かりません。。

大変だったこと

家探しでは大変苦労しました。いろいろな人がブログ等で報告していますが、ドイツでは家探しが本当に難しいです。日本のような不動産業者や代理店は存在せず、基本的に大家との直接交渉となります。そしてドイツでは大家の力が非常に強く、家を借りるためには通常、書類選考(?)の上、大家と面談し、複数の借主候補の中から自分が選ばれなければなりません。家を借りるために、あらゆる手段を尽くし、多くの同僚に助けを借りました。

これから留学を考える人へ

日本にいるとスーパードクターばかりが留学している錯覚にとらわれがちですが、実際に海外に出てみると、日本を含め各国からの本当に様々なタイプの留学生がいて、キャリア形成だけではない、様々な留学目的の存在を知り、「そこまで怖気づかなくてもよかったなぁ」と感じています。興味があれば、ぜひ、前向きに検討してみてください。チャレンジはとても楽しいです。

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