国際活動

留学体験レポート:Wellcome Sanger Institute - 石田雄大

2024年12月27日公開

2023年からイギリスケンブリッジ郊外にあるWellcome Sanger Instituteでがんや正常組織のゲノム解析で著名なPeter Campellのポスドクとして留学しています。このラボに以前留学されていた京都大学の先輩に紹介いただきました。双子の誕生と同時期に留学が始まったため、当初一人で渡航し生活をセットアップして、クリスマス休暇に帰国して家族と子供で再度渡英しました。

ヒト検体をシークエンスして、体細胞変異が慢性疾患で果たす役割を研究しています。研究所の組織の規模が大きく、留学当初は驚きの日々でした。例えば全ゲノムシークエンスはプレート単位(96個)での提出になります。日本では考えられないことです。サンプル管理、データ管理などにそれぞれ専任の職員が何人もいます。仕事のやり方も全然違っていて、PIも含め皆で分担して実験や解析をしています。PIがコーディングするのに驚いてなぜか聞いたところ、「データを理解するには自分でコードを書くのが一番効率的だから」だそうです。そのためか、ミーティングで鋭い意見や提案をいただけます。研究所の横のつながりや風通しがいい点も素晴らしいです。

NatureやScienceに毎月のように論文を出しているのでさぞガリガリ仕事をしているのだろう、と思いきや皆9時5時生活で、週末は働きません。私と同僚の中国人だけ毎週週末に実験しに行っていたら異様に思われていたようで、ラボの管理者がイースター休暇は出勤禁止!とルールを作る一幕もありました。双子の育児を妻に任せっぱなしにはできないため、9時5時でも忙しく過ごしています。

研究所主催のバーベキュー会などの各種イベントに加え、ラボの食事会などが多く、組織は大きいのに和気あいあいとしていて楽しいです。PIも交えてチーム皆でランチを食べる日々です。

困ったこととしては、渡航当初の家の賃貸契約です。物件を見つけるのも契約をするのにも苦労しました。幸い、旧知に手伝ってもらえたのでなんとかなりました。あと、国や地域にもよると思いますが、物価が日本の1.5-2倍です。例として、マクドナルドのビッグマックセットが1,015円、ガソリンが276円/L , 2LDKの家賃が332,500円します。

びっくりしたこととしては、PIがベンチャー企業の重役になるため退職したことです。Inigo Marticorena先生に新しい上司になっていただき研究を継続しています。二人の上司の異なるマネージメントのスタイルを学べて幸運だと感じています。

世界中から優れた研究者が集まる研究所ですが、日本人はほとんどおらず危機感を感じています。アフリカ、南米、東欧など今までほとんど接触のなかった研究者と知り合うことができましたが、日本人は数人程度です。本研究所には世界中(日本を除く)から研究者が集まっている・・・と言っても過言ではありません。留学では研究が進むだけでなく、異文化への理解や上司としてのあり方など人格形成に重要な無数の学びがあります。イギリスへの留学は、人生で最も良い決断の一つと感じています。ぜひ若い先生にも留学していただきたいと切に願っています。

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