国際活動

留学体験レポート:University of Pittsburgh - 栗原和生

2025年1月22日公開

留学先とその経緯

2023年9月より、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグにあるピッツバーグ大学のKaplan研究室に留学しています。この研究室での留学は、私が所属していた浜松医科大学の名誉教授である戸倉新樹先生のご紹介によるものです。戸倉先生はProf. Daniel Kaplanと親交があり、そのご縁から私を紹介してくださいました。
Kaplan研究室は、皮膚免疫の分野で先進的な研究を行っており、私自身の研究テーマとも親和性が高いため以前から注目していました。初めてのオンラインミーティングでは、Prof. Kaplanの研究に対する情熱とともに、非常に温かく迎え入れてくださるお人柄に感銘を受けました。この経験が後押しとなり、Kaplan研究室での留学を決意しました。

研究室と日々の研究活動

現在、私が研究活動を行っているのは、ピッツバーグ大学のキャンパスから少し離れた「Assembly」と呼ばれる研究施設です。この施設は2022年に設立されたばかりで、最先端の設備とモダンな建築デザインが印象的です。研究室内だけでなく、施設全体で異なる分野の研究者が頻繁に交流し、共同プロジェクトが進められる環境が整っています。そのため、私自身も新しいアイデアやアプローチを学ぶ機会が多く、日々刺激を受けています。
研究室の構成は、チーフスタッフ1名、ポスドク4名、大学院生4名、テクニカルアシスタント1名でポスドクは私を含めて全員他国から来ています。異なる文化や視点を共有することができるため、研究だけでなく個人的にも刺激的な環境です。また、ボスを含め、メンバー全員が非常に親切で、研究の悩みにも親身に相談に乗ってくれます。定期的に研究室でイベントが企画され、ボスの家でのパーティーやピッツバーグ市内での食事会など研究外での交流も盛んです。
現在、私は皮膚末梢神経が産生する神経伝達物質と肥満細胞の恒常性に関する研究を行っています。具体的には、これらの相互作用がどのように皮膚疾患に関与するのかを明らかにすることを目指しています。期待通りの結果が得られず悩むこともありますが、研究室のサポート体制や自由な雰囲気が大きな助けとなり、前向きに挑戦を続けています。

ピッツバーグでの生活

ピッツバーグは、アメリカ北東部に位置する都市です。かつて鉄鋼業で繁栄した街ですが、現在は医療や教育の分野で知られるようになりました。そのため、治安も良く、アメリカの中でも住みやすい都市の一つとして高い評価を受けています。特に2014年にはエコノミスト誌で「最も住みやすい都市」に選ばれたこともあり、実際に住んでみて本当に住みやすい都市だと感じています。私が住んでいるエリアは、特に治安が良いことで知られており、夜でも安心して外出できます。周辺には子どもが遊べる公園や広場が多く、家族連れにとって理想的な環境です。私の家の目の前にも広場があり、娘が遊ぶには申し分のない場所です。ピッツバーグはそこまで大きな都市ではないので、私のような研究留学で来ている方は私が住んでいるアパートや近くに住んでいる方がほとんどで、定期的に飲み会や情報交換の場があります。このような交流は、海外生活が初めての私にとって非常に心強い支えとなっています。
アメリカでの生活を通じて特に感じるのは、イベントや家族の時間を大切にする文化です。例えば、イースターやハロウィン、Thanksgiving Day、クリスマスといった季節ごとのイベントでは、地域全体が一体となってイベントを盛り上げてくれて、子どもたちにとっても特別な思い出になります。娘もこうした行事を通じて新しい体験をし、楽しんでいます。博物館や図書館で開催される子ども向けイベントも充実しており、長距離移動が苦手な娘でも日々を充実して過ごすことができています。

生活での苦労

異国での生活には、文化や制度の違いからくる困難がつきものです。特にアメリカの医療保険制度は日本と異なり複雑で、病院での保険適用に関するトラブルに苦労することがあります。これらの対応は主に電話で行われるため、英語でのコミュニケーション能力が必要になることがしばしばです。また、他のポスドクが流暢に英語を話す姿を見るたびに、もっと英語の準備をしておくべきだったと感じることが多々あります。

まとめとメッセージ

私は大学院への進学が遅かったこともあり、いざ海外留学を考えた時に、海外留学の助成金を応募できる年齢を過ぎてしまっていて応募できない場面が多くありました。そんな中、日本皮膚科学会の留学支援制度に採択され、現在の留学を実現することができました。この場を借りて改めて感謝を申し上げます。
留学は、困難も伴いますが、得られる経験も多く価値観も変わったように感じます。新しい環境での挑戦を通じて、私自身、多くの学びを得ることができました。順風満帆なことばかりではありませんが、留学という機会はこれからの人生において大きな意味を持つと思います。もし少しでも留学に興味があれば、コロナウイルスの影響もほとんどない今、検討してみてもいいと思います。


Prof. Daniel Kaplanと


近くの公園には広大な広場がたくさんあります。

 


自分が住んでいるアパートと近くに住んでいる先生方との交流会


イースターでの卵集めのイベント


ハロウィンでは近くの商店街に行くと子供に無料でお菓子を配っています。

 

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