国際活動
留学体験レポート:University of Miami - 鈴木健晋
2025年1月22日公開
留学先と期間
アメリカ合衆国フロリダ州マイアミにあるUniversity of MIAMI
2019/1-2023/8
留学のきっかけ
富士宮市立病院という関連病院へ出向となり年齢は40歳に近く、今後のキャリアを深く考えることが多くなっていた時期でした。富士宮市立病院は留学前後の医師が多く働いている病院で「ここで1、2年働いてボストンに行きます」とか「スイスで2年間研究して帰ってきました」とか「年末年始だけ、アメリカの給料では足りないからバイトに来てます」など伺いながら働いていますと、一度経験してみたかった海外での研究に没頭する生活への思いが強くなっていきました。関連病院にすでに数年勤めている最中、先代の教授へ相談したところ、開業の打診かと思われたようでしたが、たまたま新ラボ立ち上げの要員としてポスドクを探していたRalf教授(ボス)を紹介いただき留学へと至りました。
生活のセットアップ
渡米すると信じられないトラブルにいくつも遭遇しました。まずは、入国後仮住まいとして事前に借りていたアパートの鍵が開かず、そしてオーナーとも連絡がつきません。日本から24時間以上の移動のあとで頭が全く働かず、スーツケース8つと2歳の息子を抱えて呆然としたことを覚えています。またアメリカへの入国の記録が間違っており、今後アメリカでの生活で必須となるソーシャルセキュリティーナンバーの発行が暫くできず、問い合わせのメールも返信は来ず、電話もたらい回しとなり解決しません。他にもすべての手続きにおいて何かしらのトラブルがあり、連日のトラブルへの対応、進まない手続き、慣れない生活により体重ががつんと落ちました。
研究
新しくラボを立ち上げるところから開始したので、渡米直後はラボに必要な用品の発注から始まりました。毛のラボであり、ヒトの毛のサンプルを手に入れるため美容をやっているクリニックとのコネクション作りなども新鮮でした。グラント獲得のためボスの家に籠って申請書を書き上げたこともありました。コロナ禍は基本的にウィルス系以外の研究は慎む傾向であったにもかかわらず、ほぼ毎日出勤しがらんとした建物のなか毛の研究に携わっていたことも思い出深いです。
お金が欲しければどんどんアイディアを出せ、自分の給料は自分で稼げ、というボスの方針は日本ではまず経験できなかったものでしょう。安定的なことよりも面白い研究を好むボスのおかげで自分のマインドも大きく変化しました。新しい実験計画のプレゼンの際には「それが分かることで何につながるのか?」を常に意識するようになりました。結果として、JAKとIL-15の関係をヒトの毛で再検討した研究で研究費が取れたり、旅行中もホテルの部屋で一人缶詰になり論文を書き上げたり、と思い出すだけでどっと疲れますが、とても充実した日々でした。そんな中、日本皮膚科学会の留学支援制度を用いて、見聞を広げるためにアメリカの各学会に参加できたことは感謝この上ないです。
医療保険
私は幸いにも有給のポスドクでしたので保険料を少し抑えることができました。アメリカの保険制度は非常に複雑で高額です。我が家はアメリカ在住中に2人子供が増え、生後半年で入院をするなど保険を使用する機会がとても多かったです。ただの子供の風邪でも一度病院へかかれば$250、検査をして$300と驚くほどの請求額となりますが、恐ろしいのは後追いで様々な種類の追加請求が何度もそして数年のスパンで自宅へ届くことです。さらにその請求が間違っていることが多々あり、まずは請求額が正しいのか確認の電話をするところから始まるのが大変なストレスでした。
生活
日本人の友人関係は、私と同じく研究留学へ来ていた方、現地在住の方、日本企業から駐在の方、総領事館の方など一気に広がりましたが、アメリカの他の地域と比較するとマイアミは日本人がとても少ないそうです。だからこそ強固なコミュニティとなるようで、多くのトラブルにおいて数々の友人に助けてもらいました。住んでいたアパートや英会話学校、子供の通った保育園で海外の友人も多くでき、刺激をたくさんもらいました。また、ホームパーティに招待いただくことも多く、家族ぐるみで多くの家庭と付き合うようになり、これは人見知りの激しい自分でも新しい経験でした。
マイアミ生活後半ではまったのが、アジ釣りです。夏のシーズンともなると、竿を海に降ろしただけで瞬時に5、6匹のあたりが来ます。2時間もやれば50匹近くの魚が釣れ、料理担当の妻からストップがかかることもよくありました。
旅行にもよく行きました。フロリダ州はテーマパークが多くあり、ディズニーやユニバーサルなどがある地域までの約4時間のドライブは慣れるにつれてそれほど遠くは感じなくなりました。また、大型クルーズ船やキャンピングカーの旅も子連れには使いやすくとても楽しいものでした。
留学を諦めかけている人へ
悩むことを否定はしませんが、行き当たりばったりはそんなにダメですか?とも思います。今より若い時はもう二度とこないので時間を大事にしてほしいです。私はTOEFLもTOEICも英検さえも受けたことはないですし、英語ができなかったので心配はありました。5年近くアメリカにいて全く英語ができるようにもなりませんでしたが、英語ができなくてもアメリカで友達はできます!生活もできます!仕事もなんとかなります!家族が得られる経験もかけがえのないものです。
ハロウィーンではカボチャのカービングに挑戦しました
朝日も昇る前からアジを釣りに桟橋へ
アメリカンサイズのキャンピングカーでアラスカを旅行
ラボのみんなとの送別会
フロリダはどこの海に行っても綺麗でした