国際活動
留学体験レポート:Heidelberg University - 藤田優里
2025年1月22日公開
藤田優里
留学先:Department of Dermatology and Dermatopathology, University Medical Center Mannheim, Medical Faculty Mannheim, Heidelberg University, Germany
留学期間:2024年4月~現在
留学先
2024年4月より、ICDP(The International Committee for Dermatopathology)認定の皮膚病理診断トレーニング施設であるUniversity Medical Centre and Medical Faculty Mannheim, Heidelberg University, Mannheimにて、Prof. Dr. Géraudの指導のもと、ゲスト研修生として皮膚病理診断のトレーニングを受けています。もともと日本で皮膚病理学に興味をもち、専攻医研修および大学院生として皮膚病理の研究を続けていた私は、ドイツで研修を継続したいと考え、この留学先を決めました。
留学の経緯
元々入局当初から留学を志していたわけではありませんでしたが、夫が仕事の都合でドイツに移住することが決まったため、数年前からドイツでの生活を視野に入れ始めました。当初は、海外での研修や研究は自分にはハードルが高いのではないかと考え、キャリアを一旦中断するつもりでいました。しかし、夫の勧めもあり、何か自分にできる可能性がないか探してみることにしました。
以前から皮膚病理学に興味があった私は、ドイツの皮膚病理分野について調べる中で、フランクフルトで毎年ICDP – UEMS(European Union of Medical Specialists)国際皮膚病理認定試験が行われており、そのトレーニング施設がヨーロッパにあることを知りました。さらに、偶然にも夫の住む家から徒歩圏内にそのトレーニング施設のうちの1つがあることを知りました。そして、幸運なことに、受け入れをご快諾いただき、研修を受ける機会を得ることができました。
留学先での仕事・研修内容
主に、日々の皮膚病理診断業務に携わっています。研修内容としては、皮膚病理に興味のある同世代の先生とともに、当日届いた皮膚病理検体を事前に観察し、診断報告レポートの下書きを作成します。その後、Prof. Dr. Géraudと共にもう一度同じ検体を観察し、最終診断レポートを完成させながらフィードバックをいただきます。空き時間には、研修施設に蓄積されている貴重な症例の数々を、観察して勉強を重ねています。
日本ではあまり経験できない症例も数多く学ぶことができており、自分のペースでじっくり検体を観察する時間も確保されています。さらに、フィードバックを直接いただける環境もあり、非常に恵まれていると感じています。また、皮膚病理に興味を持つ同世代の先生と知り合い、互いに教え合いながら共に学べる環境がとても嬉しく、励みになっています。
さらに、Prof. Dr. Géraudは月に1度、若手の先生と私を対象に勉強会も開催してくださり、大変貴重な学びの場となっています。
ドイツでの生活
私の住む街マンハイムは大学都市で、留学生や大学生が多く住んでいます。もともとドイツ語は全くできませんでしたが、留学前から少しずつ学び始めました。病院内の先生やスタッフ、また街の人々も親切に英語で接して下さるため、大きな不便は感じていません。しかし、ドイツ語をさらに上達させるため、語学学校に通いドイツ語も学んでいます。語学学校では、同じように海外から移住してきた人たちと知り合うことができるため、異文化交流と人脈の拡大にも役立っています。
研修先の病院では先生方は通常、朝8時から夕方5時まで勤務されていますが、アフター5や土日はハイキング、スポーツ、小旅行などを楽しむ人が多く、とてもアクティブに過ごしている印象です。また、年間30日間の有給休暇もあるため、ライフワークバランスが非常に良いと感じます。
よかったこと
もともと私は皮膚科に入局した直後から皮膚病理の分野に関心を持ち、日本で4年間学ばせていただいておりました。例え日本に残っていたとしても、引き続きこの分野で学び続けたいと考えていたため、海外移住しても研修を継続できるチャンスをいただけたことを、大変ありがたく感じています。研修先の教授も非常に教育熱心で、病理だけでなく臨床や研究についても幅広く指導してくださり、毎日が貴重な学びの機会です。
日本だけでなくドイツでも、皮膚病理の分野は医師不足や医師の高齢化といった課題を抱えているようです。その中で、同世代で一緒に勉強できる仲間と出会えたことが、私にとって何よりも嬉しいことでした。
大変だったこと
私は留学先ではゲスト研修生であるため、無給で研修しています。円安やインフレの影響もあり、日本で働いていた頃と比べると経済的に多少の苦労があることは否めません。そのため、所属大学や日本皮膚科学会の留学支援制度からサポートをいただけたこと、大変感謝しております。
最後に
留学は異なる文化や人々と触れ合い、さまざまな経験や知識、考え方を学ぶ貴重な機会です。最初はハードルが高く感じられましたが、チャレンジしてみてよかったと心から思っています。
今回、私がドイツ留学の機会を得ることができたのは、家族のサポートや、人手不足のなか留学を許可してくださった医局の先生方のサポートあってのことであることは言うまでもありません。入局間もない頃から、たくさんの皮膚病理の検体を経験させていただき、家庭教師のように手厚く丁寧にご指導してくださった先生方に心から感謝しています。この経験から得た知識がなければ今回の機会を得ることは難しく、キャリアを中断せざるを得なかったと思います。
また、日本皮膚科学会や当院からの経済的なご支援を賜ることができたことにも感謝しております。この留学経験を無駄にすることなく、帰国した際には医局や日本の皮膚病理分野で少しでも貢献できるように、引き続き精進してまいります。