国際活動
留学体験レポート:Icahn School of Medicine at Mount Sinai - 入來景悟
2025年1月22日公開
留学体験記(入來 景悟/アメリカ Icahn School of Medicine at Mount Sinai)
留学先と時期
2022年4月から、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)のBrian Kim研究室にてポスドクとして研究に従事しています。
Brian Kim研究室のメンバー。中央の背広の男性がBrian Kim先生。デニムにワイシャツが入來。
留学の経緯
大学院博士過程では、慶應義塾大学皮膚科学教室にて尋常性天疱瘡を研究対象として、自己反応性T細胞に対する免疫寛容の研究に従事しました。そこで得られた免疫学的な知識を活かしながら、新たな挑戦をしたいと考え、神経免疫の分野で最先端の研究をしているBrian Kim研究室で仕事ができないかという思いを抱きました。Brian Kim先生が慶應義塾大学に訪問された際に、ご挨拶及びDiscussionをさせていただいていたご縁もあり、天谷雅行先生のご助力の元、留学させていただけることとなりました。
留学先での仕事
私の主な研究テーマは、「ヒトiPS細胞からの痒み知覚神経の誘導」と「アナフィラキシーにおける神経免疫軸の寄与の解明」です。培養神経の電気活動の記録や、生体内での神経機能を操作するための小手術など、神経学的な技術を学び、Brian Kim先生の豊富なアイデアと助言を頂きながら実験を行っています。
ヘルズキッチンに位置するBrian Labがあるビルの外観
楽しかったこと
多くのものが密集するニューヨークという都市の利点を活かし、近隣の大学との密接なコラボレーションが可能で、多くの研究者との交流を通じて刺激的な経験を得られています。また、各研究グループでは年に一度、リトリートと呼ばれる学内研究発表会を開催されるのが慣例で、これらの会場はマンハッタン内の旧ユダヤ教会や歴史的な美術館など、非日常的な場所で行われることが多く、都市の文化的な豊かさを肌で感じられる貴重な機会となっています。
私生活の面でも、日常生活の随所で異国の文化に日々触れることができたのは楽しい経験でした。特に、ハロウィンから、サンクスギビング、クリスマスにかけて見られる、職場を含め街全体が少し浮足立っていくような雰囲気は、日々ワクワクとした高揚感を抱かせてくれました。また、週末などに立ち寄る公園や散策した地域で、ふとその背景にあるアメリカの開拓や発展の歴史を垣間見られたりすることも、現地で生活したことによって実感できた事だと感じています。
旧ユダヤ教会でのリトリートの様子
ニューヨーク開拓の始まりの地、ガバナーズアイランドで凧揚げをしている様子
大変だったこと
私の語学力の問題ではありますが、議論の場で、自分の意図を正確に伝える言葉を選んでスムーズに会話することに苦心しました。また研究に関する議論に加え、相手の口や表情、手の動きが見えない、電話での会話が特に難しく、渡米直後に生活基盤を整える際には、何度か心が折れそうになることもありました。当然のことになってしまいますが、英語力の重要性を実感しています。また、円安とインフレが相まって、ニューヨークの高い生活費には苦心していますが、この面は日本皮膚科学会の留学支援制度にご助力いただき大変ありがたく思っています。
これから留学を考えている先生へ
留学は、研究設備の充実のみならず、様々なバックグラウンドを持つ優秀な研究者達との交流を通じて、研究に対する思考の質と量を豊かにする貴重な機会だと思います。また、異文化の中での私生活を通じて得られる多くの気付きがあり、視野の広がる恵まれた経験であるとも感じています。留学に興味をお持ちの先生方には、ぜひ積極的に検討していただければと思います。