国際活動
留学体験レポート:Scripps Research - 堀井幹喜
2025年1月22日公開
Scripps Research 堀井幹喜
San DiegoにあるScripps Researchにポスドクとして留学中の堀井幹喜と申します。こちらでの研究やSan Diegoでの生活についてご紹介したいと思います。
研究テーマ
私は今、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)分野の世界的な権威であるPaul SchimmelとXiang-Lei Yangが率いるラボに所属し、ARS・tRNAに関する研究を行っています。皮膚科医にとってARSは抗ARS抗体症候群を通して馴染みのある存在かと思いますが、tRNAというと少し距離を感じるのではないでしょうか。少なくとも私の記憶ではtRNAは「アミノ酸と対応するコドンを結びつける役割を担うRNA」として細胞生物学の講義でわずかに触れられたのみでした。しかし、実はtRNAは蛋白合成の役割だけにとどまらず、糖代謝や免疫調節など多才な機能を有することが知られており、Schimmel and Yang labでは、「tRNAの起源や進化」といった生命の核心に触れるようなテーマから、糖尿病、Charcot-Marie-Tooth病など私たちにも馴染み深い疾患におけるARS・tRNAの役割まで多岐にわたる研究が進められています。私は「The involvement of tRNA in the pathophysiology of Anti-synthetase Syndrome」をテーマに、抗ARS抗体症候群の発症メカニズム・tRNAの機能について日々研究しております。
ラボでの生活
一週間におけるラボのイベントとしては月曜日に行われるLab meetingとJournal club(抄読会)があります。両者とも毎週一人プレゼンターが指名され、大体1時間かけて各々のプロジェクトの進展や興味を持った論文1.2本について説明します。後者は「チョークトークスタイル」を採用しているのが特徴であり、ホワイトボードとペンだけを使って、論文の内容を図示説明します。おそらく、スナックでもつまみながら最近読んだ論文を気軽に紹介するというのがその目的だと思うのですが、英語が達者ではない私にとっては「チョークトークスタイル」が逆にJournal clubを一層タフなイベントとしております。どちらのイベントも言語の壁は当然、専門知識の壁(Schimmel, Yang Labのメンバーの大半は医者ではなく、タンパクや結晶解析といった理学・工学のスペシャリストで構成されています)にも阻まれ、日々悪戦苦闘しております。
San Diegoでの生活
日本での生活と比べてまず驚かされるのは、やはりサンディエゴの気候です。一年を通じて最高気温はおおよそ20~25℃と安定しており、雨もほとんど降らず、常に快適で穏やかな陽気が続きます。その心地よさは、まさに魅力の一つといえるでしょう。もちろん、折りたたみ傘は一本を持っていますが、この一年で使用したのは両手で数えられるくらいであり、しばしば傘が行方不明になることもあるほどです。週末には友人とスポーツやトレッキング・BBQを楽しむのが恒例になっていますが、誰も天気予報を確認することはありません。皆が「どうせ晴れるだろう」と盲信しているからです。それほどまでに、San Diegoの住人「San Diegan」は天候に絶大な信頼を寄せているのです。
海外生活といえば、まず食事の心配をされる方も多いかもしれませんが、サンディエゴにおいてそれはまったくの杞憂です。Californiaはアジア系アメリカ人が多い地域であり、San Diegoにも研究者のみならず、留学生・企業の駐在員など多くの日本人が住んでおります。その影響もあり、日系スーパーが3軒あるほか、日本食材を扱う韓国系・中国系スーパーも複数あります。また、日本人が経営する日本食レストランも多数あるため、少々お金を出せば、ほぼ日本と同じ食生活ができる“Japanese friendly”な街となっております。
最後に
渡米後、生活の基盤を整え、研究活動を開始するにあたり、さまざまな困難に直面いたしました。それでも、多くの方々の温かいご支援と励ましを受け、現在では充実した留学生活を送ることができております。この場をお借りし、これまでご支援いただきました皆様に、心より御礼申し上げます。
夜のLa Jolla
ミッドウェイ博物館(空母ミッドウェイ)
Petco Park(サンディエゴ・パドレスの本拠地)
パドレス・ドジャース戦 大谷の打席