国際活動

留学体験レポート:Swiss Institute of Allergy and Asthma Research - 三田村康貴

2025年2月5日公開

スイスでの研究生活

三田村康貴
Swiss Institute of Allergy and Asthma Research
九州大学皮膚科

2019年から2024年にかけて、私はスイスのダボスにあるSwiss Institute of Allergy and Asthma Research(SIAF)というZurich Universityの関連施設で研究留学を行う機会に恵まれました。この5年間、Cezmi Akdis教授の指導のもと、アトピー性皮膚炎の複雑な病態解明と皮膚バリア機能に関する最先端の研究に携わりました。

スイスでの生活

SIAFはスイスアルプスの有名なスキーリゾート、ダボスにあります。この立地は、研究と生活の両面で素晴らしい経験をもたらしました。夏にはアルプスでのハイキングを楽しみ、冬季には家族でスキーやスケートを楽しみました(写真1)。自然に囲まれた環境は、研究の合間のリフレッシュに最適でした。

また、スイスがヨーロッパの中心に位置することを活かし、周辺諸国への旅行や国際学会への参加を通じて、多様な文化に触れる機会を得ました。これらの経験は、研究者としての視野を広げるだけでなく、個人的な成長に大きく貢献し、家族とのかけがえのない時間にもなりました。


写真1 アルプスで娘、友人と。

研究内容

SIAFでの研究は、アトピー性皮膚炎の病態メカニズムを深く理解することを目的としていました。特に注目したのは、皮膚バリア機能の役割です。私たちの研究では、最新のマルチオミクス技術を駆使しました。

皮膚組織内の遺伝子発現パターンを空間的に可視化するSpatial transcriptomics、個々の細胞レベルでの遺伝子発現解析を行うSingle cell transcriptomics、タンパク質の網羅的解析を行うMultiple proteomicsといった技術を組み合わせることで、アトピー性皮膚炎における炎症、皮膚バリア機能の変化を分子レベルで詳細に研究することができました。さらにElectrical impedance を用いた新たなバリア機能解析方法の開発にも携わることができました。SIAFは毎年World Immune Regulation Meeting(WIRM)という国際学会を主催しており、また上皮バリアに関するサマ-シンポジウムも主催していました(写真2)。これらの経験を通じて様々な研究者と交流を深めることが出来ました。


写真2 SIAF主催のWorld Immune Regulation Meeting(WIRM)でSIAFメンバーと。

終わりに

SIAFでの研究留学は、ただ専門的に研究を進めるだけでなく、国際的な研究環境での経験、そして豊かな自然と文化に触れる機会を提供してくれました。アメリカとは異なる研究スタイルや生活環境を経験できるヨーロッパでの留学は、研究者としてのキャリアに独特の価値をもたらしてくれたと思います。

若手研究者の皆さんには、ぜひヨーロッパでの研究留学も検討することをお勧めします。研究能力の向上はもちろん、人生観を豊かにする貴重な経験となるはずです。

最後になりましたが、留学に際しまして2020年度 日本皮膚科学会留学支援制度を受理いたしました。日本皮膚科学会に厚く御礼申し上げます。

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