国際活動
留学体験レポート:Otto von Guericke University Magdeburg - 加藤裕史
2025年2月5日公開
留学先と期間
Otto von Guericke University Magdeburg, Klinik und Poliklinik für Dermatologie und Venerologieに2023年4月より10月の6ヶ月間留学をさせて頂きました。マグデブルグ市はベルリンの西側にあり、旧東ドイツに属していたザクセン=アンハルト州に位置しています。大学の設立が1993年とまだ歴史は短いですが、病院としては100年以上前から存在しており、歴史を感じる建物が多く見られました。責任者のDr. Thomas Tütingと所属の医師、そしてザクセンアンハルト州のご厚意により、臨床業務にも積極的に携わらせていただく事ができました。
手術室でのサポート
留学先での仕事
留学先では多くの時間を附属病院の皮膚科クリニックで過ごさせて頂き外来や手術室、病棟業務に携わらせて頂きつつ、空き時間にはドイツでも数少ない皮膚病理専門医による病理トレーニングを受ける事ができました。それに加え、皮膚科研究室では腫瘍免疫におけるCD4陽性細胞の腫瘍への直接的な抗腫瘍効果に対する研究や、各種腫瘍におけるB細胞の影響についての組織学的なアプローチの研究に携わらせて頂きました。また留学途中にベルリンで開催されたドイツ皮膚科学会総会やマグデブルグで行われた地方会にも参加をさせて頂き、プライベートクリニックの先生方とも交流を持たせて頂きました。
ドイツ皮膚科学会総会
ボスの自宅でのホームパーティ
楽しかったこと
学術的には、様々なタイプの皮膚癌患者を直接診察したり、蓄積された膨大なデータベースを閲覧させて頂くことで、臨床、ダーモスコピー、病理像(デジタルスライド)を合わせて診ることができたことが最も充実していました。医師だけではなく、看護師や他のコメディカルも含めてとても優しく、協力してくださり、臨床力が数段階アップした実感があります。しかし、最も充実していたのは家族との時間でした。子どもの学校や妻の仕事との関係上、家族は2ヶ月のみの滞在ではありましたが、かけがえのない時間を過ごすことができました。
大変だったこと
まずは言語です。医師とは英語での意思疎通が可能でしたが、看護師や病院スタッフはドイツ語(もしくは一部はロシア語)しか通じず、当初はとても苦労しました。手術室ではさみをもらうだけでも一苦労で、最初にやったことは手術道具を全てドイツ語で覚える事でした。最初に正確に発音できたときの機械出し看護師さんのSupar!という言葉は忘れられません。
留学中でも日本の仕事もある程度行える時代だと感じました
留学中でも手術カンファレンスや腫瘍カンファレンスなどについては、留学中でもウェブを通じて参加する事が可能でした。日本での手術症例の皮弁での再建方法を画面上で描画しながらディスカッションに参加したり、病理像について写真を呈示したりと一昔前では考えられないようなコミュニケーションを取る事ができました。ある程度以上の立場になると日本での仕事から離れられず、留学へのハードルがどんどん高くなってきますが、このようなツールを活用することで、ある程度日本での責任を果たしつつ、留学生活を送ることもできますので、色々な理由で留学を躊躇されている方がおられましたら、参考にして頂けると幸甚です。
日本とのオンラインカンファレンスの様子
これから留学を考えている先生へ
半年という短期間の留学ではありましたが、人生においてかけがえのない経験をする事ができました。留学前には、言葉の問題や留学費用など、様々な面で不安はありましたが、皮膚科医としてレベルアップしたことが実感できます。最後に、私の留学に際して大きなサポートを頂いた森田明理教授と名市大皮膚科スタッフの皆様、留学費用助成を交付頂いた日本皮膚科学会に心より御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。
仲間からプレゼントしてもらった写真とメッセージ