国際活動
留学体験レポート:Columbia University - 伊東孝政
2025年2月17日公開
留学機関と期間
2020年から3年半
Columbia University, The Department of Microbiology and Immunology, New York, USA
Huang Lab
留学経緯
もともと大学院卒業後(指導教員:阿部理一郎 新潟大学教授)、AIの研究を目的に国内留学の準備を進めていました。しかし、清水宏先生(北海道大学皮膚科前教授)に今後の進路について発表する機会をいただいた際、発表後に「何をやってもいいけど、海外に行ったら?」と一言だけ助言をいただきました。この言葉を受け、守りに入っていた自分に気づかされました。そして、その約1か月後には海外のラボで面接を受け、留学が決まりました。
留学先とその生活
ボスであるHuangは、2型自然リンパ球に関する先駆的な研究を行っている若手PIで、着想・知識はもちろん、実験手技も非常に洗練されており、研究に対する情熱を強く感じる方でした。ラボは私を含めポスドク3人という小規模でしたが、皆精力的に研究に取り組んでいました。毎週、ラボ内ではデータクラブ(DC)とジャーナルクラブ(JC)、そしてDepartment内ではポスドクの進捗発表会(RIP)が行われており、DCとJCではボスに、RIPでは他ラボの血気盛んなPIやポスドクたちに英語も含めて打ちのめされる日々で、非常に刺激的でした。幸いにも私の研究は形にすることができたので、あとは結果を期待したいと思います。
ニューヨークの生活について
渡米時はコロナの影響で全ての娯楽が中止され、多くの飲食店が閉店し、街はゴーストタウンのようでした。また、移住に伴う各種手続きを行う役所の対応や物件の下見、家具の購入・配送などにも多くの制限がありました。最も驚いたのは、物価や家賃の高さでした。円安の影響もありますが、Studio(日本でいうワンルーム)に月50万円支払うことになるとは思ってもいませんでした。アメリカのポスドクの給与はNIHが定めており、ほぼ一定ではあるものの、マンハッタンでは生活するのがやっとでした。
ポスドクには厳しい環境でしたが、マンハッタンには博物館、美術館、スポーツ、自然(セントラルパーク)、グルメ、ショッピングなど、ほぼ全ての娯楽が揃っており、パンデミック後は休日に街を散策するだけでも楽しい時間を過ごせました。また、皮膚科医として印象的だった出来事は、Pre-Kに通っていた息子の臀部に虐待の疑いがあるとの連絡を受けたことと、息子の親友が実は日本の皮膚科研究に大きく貢献したStephen I. Katz先生のお孫さんだったと知ったことです。人生面白いものです。
最後に
この3年半は、あっという間でしたが、その中身は非常に濃く、長く感じるほどの時間でもありました。抱っこ紐で息子を抱え、両手に大きなスーツケースを持ちながら、家族3人でジョン・F・ケネディ空港に降り立ったときの高揚感、新生活の準備での苦労、そして慣れない英語での対応など、多くの出来事がありました。思い出補正もあるのかもしれませんが、いずれも鮮明によい記憶として残っています。留学は間違いなく私の人生にとって大きな1ページです。この機会をご提案くださった清水宏名誉教授、後押ししてくださった氏家英之教授、日本皮膚科学会留学支援制度に心より感謝申し上げます。そして、何よりも一緒に渡米し、慣れない環境で日々支えてくれた妻と息子に心から感謝します。
私のラボからの眺め
Katz先生のお孫さんと我が息子
NYCマラソンで初マラソン
コロナ禍の地下鉄