国際活動

留学体験レポート:University of Turin - 安齋理

2025年2月17日公開

2023年9月からイタリア北西部・ピエモンテ州のトリノにあるUniversity of TurinのGiacomo Donati Labにてポスドクとして勤務し、留学生活を送っています。

研究施設について

University of Turin(Università degli studi di Torino、トリノ大学)は1404年に創立された、非常に歴史の長い大学で、多数の学部・学科を有し、トリノ市内や近郊に多数のキャンパスが存在しています。所属する研究室はトリノ市内の比較的中心部にあるMolecular Biotechnology Center(MBC)という研究施設にあります。同施設には癌生物学、幹細胞生物学、エピジェネティクス、免疫学、神経学、循環器病学など多様な分野を専門とする研究室があり、イタリア国内やヨーロッパ各国出身者を中心に世界のさまざまな国出身の研究者も働いていますが、日本人は現時点では他にいないと思われます。

研究室での生活

研究室では、主に創傷治癒や発癌における表皮幹細胞の可塑性を制御する分子メカニズムについて研究しています。特に最近では、皮膚幹細胞における炎症や創傷のエピジェネティックな変化による記憶に注目しており、私もマウスモデルを中心にエピジェネティック因子の調節が皮膚幹細胞の炎症・創傷記憶に与える影響についてのプロジェクトを進めています。前所属先で取り組んでいたテーマとは異なる分野であることもあり、勉強の日々ですが、幸いにも少しずつ興味深いデータが得られてきており、形にできるように頑張っていきたいと思います。
研究室は総勢10名ほどで比較的規模は小さいですが、少し大きな家族の様な関係で、PI、ポスドク、学生含め日常の細々としたことから実験結果のディスカッション等頻繁に意見交換をおこなって各自のプロジェクトを進めています。研究室ではMD/皮膚科医は自分だけで、Wetの実験を専門にする生物学者を中心に、dryの解析を専門とするバイオインフォマティシャンもいる環境は、これまでの所属先の雰囲気とは大きく異なり刺激を受ける日々です。

研究以外の生活

渡航当初はイタリア語が全くわからない状況だったので、日常の買い物やレストランの注文なども苦労するところもありましたが、最近は徐々に慣れてきて、スーパーマーケットや市場でローカルな食材を試したり、様々なレストランを楽しんだりしています。もちろん昨今の物価高騰・円安など金銭コストやイタリア特有の行政制度などにより苦労する点も多いですが、そういった点も含めて日本でのこれまでの日常生活を見つめ直す良い機会になっているかなと思います。
また、休暇を使ってイタリア国内を中心に旅行に出かけたりしています。イタリア国内だけでも地方・州ごとにかなり異なる文化を体感することができて非常によい経験となっています。今後はヨーロッパ内の他の国等にも足を伸ばせればなと思っています。

おわりに

最後に本留学に際し海外留学支援制度による支援をいただいた日本皮膚科学会の皆様、この様な機会をいただき快く送り出してくれた新潟大学皮膚科の阿部理一郎教授と医局の皆様、留学先をご紹介いただき、渡航後も多くのご支援をいただいている北海道大学皮膚科の渡邉美佳先生、夏賀健先生にも重ねて御礼を申し上げたいと思います。
今回の貴重な留学での経験を、帰国後、皮膚科学のさらなる発展や診療・教育などに生かせるように、残りの滞在期間を過ごしたいと思います。


トリノ中心部には旧王宮など歴史のある建物が並ぶ美しい街です


研究施設(Molecular Biotechnology Center, University of Turin)外観。ガラス張りとコンクリートの近辺では珍しいモダンな作りの建物です。

 

様々なイタリア料理も楽しめます。

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