Q11免疫療法、分子標的療法ってどんな治療ですか?
免疫療法では免疫チェックポイント阻害薬という薬を用います。人間のからだには本来外界からの異物やがんなどを攻撃して排除する免疫機能が備わっており、Tリンパ球という細胞が異物、がん細胞を攻撃する役割を担っています。しかしがん細胞はTリンパ球を攻撃する力を弱めてしまう信号(シグナル)を出すことにより、免疫機能を抑制して自身が増殖できるようにします。この免疫機能にかかわる信号のやりとりをする部位をチェックポイントと言います。この部位をブロックする薬を使用することにより、本来備わっている免疫機能を取り戻して、メラノーマを攻撃できるようにするのが免疫チェックポイント阻害薬の働きです。
一方で、がん細胞が増えていく原因は免疫の力を弱めてしまう信号を出すだけに留まりません。がん細胞内部の細胞増殖にかかわる信号経路の遺伝子の一部にきずがついている(遺伝子変異がある)と、どんどん細胞が増えていくよう無秩序に信号経路が働いてしまいます。この遺伝子にきずがある箇所の信号をブロックして、無秩序ながん細胞の増殖を抑える薬が分子標的療法となります。
このように現在メラノーマの治療は①がん細胞周囲の免疫の環境を攻撃しやすいように調節する、②がん細胞内部の細胞を増やしてしまう経路をブロックする、というがん細胞の外と内に働く薬が薬物療法の二本柱となっています。これらの薬剤は手術後の再発転移予防と再発転移がおきてしまった進行期の治療のいずれの場面でも用いられます。
これらの薬は投薬の仕方(飲み薬、点滴)や効果、副作用など、その特徴が大きく異なります。どちらの薬で治療するか、担当医より十分くすりの特徴を聞いたうえで決定する必要があります。