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イボとミズイボ、ウオノメとタコ─どう違うのですか?─

Q2イボ(ウイルス性疣贅)は、どうしてできるのですか?

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 イボは、ヒト乳頭腫ウイルスと言うウイルスの一種が皮膚に感染してできます。ヒト乳頭腫ウイルスはhuman papillomavirusの日本語訳です。日本語訳と英語読みを組み合わせてヒトパピローマウイルスと書いたり、英語名をHPVと略して書いたりもします。このHPVには多くの種類があって、普通のイボ以外にも、ある種のものが性感染症(性病)である尖圭コンジローマの、他のある種のものが子宮癌の原因ウイルスとして注目されていますので、そのような話題でも、これらの異なるウイルス名を新聞・雑誌やテレビなどで見聞きされることが多いと思いますが、呼び名が違うだけで同じウイルスを指しています。HPVのうち、さらにある種のものが皮膚や粘膜の細胞に感染すると、見た目の異なるいろんなイボができ(理由はQ3で述べます)、それらを全部ひっくるめた呼び名がQ1にも出て来たウイルス性疣贅です。
 もう少し詳しく説明します。皮膚は表面の方から順番に、表皮、真皮および皮下組織と呼ばれる3つの層からできています。表皮は角化細胞とよばれる細胞が何層にも重なってできているのですが、その一番外側にあるのが角質層です。深くなるに従って顆粒層、有棘層と名前を変え、一番深い層が基底層です(資料4)。皮膚はこのように何層にもなって、免疫の働きなどとも力を合わせて、私達を外界の有害刺激やウイルスや細菌感染などから守っています。
 イボのウイルスも正常の健康な皮膚には感染できない(と考えられている)のですが、小さな傷などがあるとそこから皮膚に入り込んで、基底層にある細胞(基底細胞と呼ばれます)に感染してイボをつくると考えられています。感染を受けた基底細胞は細胞分裂が活発になり、まわりの正常細胞を押しのけて増え続けます。もっとも、理由はまだよく分かっていませんが、ある程度の大きさ以上にはなれないみたいです。こうしてできた感染細胞の塊が、私たちが日常見ているイボの正体です(資料5)。外陰部や口など皮膚に連続する粘膜も皮膚と似たような構造をしていますので、同じようにしてイボができます。外陰部のイボは、特に尖圭コンジローマと呼ばれ、先にも書きましたように性感染症として扱われます。
 このように、イボができるためには小さな傷を通してウイルス(HPV)が皮膚や粘膜に入り込み基底細胞に到達する必要があります。外傷を受けることの多い手足や外陰部に、あるいはアトピー性皮膚炎の子供たちなどの特に引っ掻くことの多い肘・膝窩にイボができ易いのはこのためです(資料6)。
 このような「イボのできるメカニズム」を知っておくことは、予防のためのヒントにもなりますね。

資料4 正常皮膚の構造(模式図)
資料5 イボができるまで(模式図)
資料6 指に棘が刺さった後にできたイボ
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