Q3限局性強皮症は全身性強皮症の軽症型ですか?
限局性強皮症と全身性強皮症は病名が似ていますが、全く異なる別の疾患です。最も重要な点ですので、以下に詳しく説明します。
全身性強皮症は皮膚と様々な内臓の血管異常と硬化を特徴とする膠原病です。膠原病というのは難しい概念ですが、その特徴を簡単に一言で言うと「自己に対して反応する免疫の異常(自己免疫)により2つ以上の臓器が侵される病気」です。全身性強皮症では皮膚、肺、心臓、消化管などの臓器に硬化が生じます。皮膚硬化は指から始まり、手背から前腕へと、連続性に近位(体幹に近い側)に向かって進行します。皮膚硬化が体幹へと広範囲に及ぶほど内臓病変も重篤になることが知られています。また、血管の異常として、レイノー現象や手指潰瘍(手指にできる深くて治りにくい傷)が生じます。一方、限局性強皮症は「限局した領域の皮膚に境界明瞭な硬化が出現する病気」です。病変が深部に及ぶことで脂肪組織、筋膜、筋肉、骨・関節、神経などが侵されることがありますが、内臓病変は伴いません。皮膚のみが侵される単臓器疾患であり、膠原病の範疇には入りません(膠原病類縁疾患と呼ばれます)。手指の硬化はなく、レイノー現象などの血管の異常もないのが特徴です。全身性強皮症は内臓病変により生命予後に影響する疾患ですが、限局性強皮症は内臓病変を伴わないため、生命予後は良好です。
全身性強皮症ですが、皮膚硬化の範囲により大きく2つの病型に分類されます。皮膚硬化が肘よりも遠位(体幹から遠い側)に留まるものを限局皮膚硬化型全身性強皮症、皮膚硬化が肘を越えて近位に及ぶものをびまん皮膚硬化型全身性強皮症と言いますが、限局皮膚硬化型全身性強皮症は限局性強皮症と病名が類似しています。そのため、限局性強皮症はしばしば全身性強皮症の限局型と誤認されてしまいます。限局性強皮症は主に皮膚科領域で扱われる希少疾患ということもあり、医療従事者であってもこの2疾患を混同している場合があるので注意が必要です。