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膠原病と類縁疾患

Q5限局性強皮症の原因は何ですか?

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 限局性強皮症の原因は未だ明らかにされていませんが、皮膚病変の特徴的な分布や血液検査で抗核抗体が高頻度に検出されることから、「体細胞モザイクに対する自己免疫応答」が主要な病態ではないかと推測されています。少し難しい話になりますので、以下にできるだけわかりやすく説明します。

 まず、この病気を理解するうえで必要となる「体細胞モザイク」と「ブラシュコ線」という2つの言葉について説明します。体細胞モザイクとは、「一個人に体細胞突然変異により遺伝的に異なる2種以上の細胞が混在している状態」のことを意味します。一方、ブラシュコ線とは、「1つの前駆細胞に由来する皮膚の領域」を意味し、全身の皮膚に線状~帯状に分布しています。発生の特定の時期において、1つの前駆細胞に軽微な体細胞突然変異が生じた場合、その前駆細胞に由来するブラシュコ線は他のブラシュコ線と遺伝子レベルで異なることになり、体細胞モザイクの状態となります。私たちの体はブラシュコ線によって区分される体細胞モザイクの状態となっていると考えられますが、通常はその発現型の差異は非常に軽微であり、免疫担当細胞によって異物とは認識されません。一方、外傷、放射線照射、熱傷、外科的処置、ワクチン接種などを契機に免疫系が賦活化されると、その軽微な差異が異物として認識されてしまう場合があります。その場合、ブラシュコ線を単位とした皮膚の領域が自己の免疫担当細胞によって攻撃されてしまい(自己免疫といいます)、その結果として硬化や萎縮といった皮膚の変化が生じてきます。

 事実、限局性強皮症を発症する前に微小な外傷などの免疫系の賦活化を伴うようなエピソードが問診により聴取できることはしばしば経験します。また、限局性強皮症の患者さんでは血液検査により抗核抗体検査(自己に反応する免疫の有無を調べる検査)が陽性となる頻度も高いことが知られています。

限局性強皮症


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