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膠原病

Q5全身性エリテマトーデスとはどういう病気ですか?

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病気について

 エリテマトーデスには全身に症状が起きる全身性エリテマトーデスと皮膚だけに症状が出る皮膚エリテマトーデスがあります。全身性エリテマトーデスは、英語でsystemic lupus erythematousといい、その頭文字をとってSLEと略して呼ばれます。lupus とは、皮膚に狼に噛まれた痕のような赤い斑ができることから名付けられました。平成22年度の特定疾患に登録され患者数は56,254人でしたが軽症の患者さんはその数倍いると考えられています。男女比は1:9で、圧倒的に女性に多い病気です。すべての年齢に発症しますが、15才から65才までに多く起こります。原因は不明ですが、自分の体を自分の免疫が攻撃してしまう、自己免疫反応によりさまざまな炎症が起こります。発症や悪化の誘因となるのは紫外線曝露、寒冷刺激、感染症、外傷、手術、妊娠・出産、薬剤、ストレスがあります。診断はいくつかの症状と血液、尿検査の組み合わせから総合的に判断します。遺伝病ではありませんが、病気になりやすい体質素因は家族内で引きつがれます。遺伝子が同じ一卵性双生児では一方が発症した場合の他方の発症率は30%程度ですので、残りの70%は環境要因が考えられます。

症状について

 全身症状、皮膚症状、内臓臓器の症状が見られます。全身症状として発熱、全身倦怠感、関節痛を起こします。関節症状は手指が痛むことが多く、肘、膝などの大きな関節に移動性の関節炎が見られることもあります。皮膚症状:最も特徴的なのは、両頬の赤い発疹で、蝶が羽を広げている形に似ているので、蝶型紅斑と呼ばれています (図2)。 丸く表面にかさかさする鱗屑を伴う円板状の紅斑も、この病気に特徴的で、顔面、耳、首のまわりなどに好発します(図3)。この発疹は皮膚症状だけのことが多くあります。紫外線に暴露した後に、露光部位に紅斑、水疱、あるいは熱が出ることがあり、このような日光過敏症はこの病気でよく見られ、発症のきっかけに鳴ります。反対に寒冷刺激によっても手指が白く冷たくなるレイノー現象や凍瘡(しもやけ)様紅斑が出現します(図4)。そのほか、口腔内特に上口蓋の発赤とびらん、びまん性脱毛(前頭部から頭頂部に毛髪が疎になります(図5)。髪の毛が細く折れやすくなることもあります。内臓の臓器では腎炎がもっとも多くみられますが、肺、心臓、消化管、脳など多くの臓器に症状が出ることが知られています。

治療について

 免疫を抑える作用のある薬を使います。このうちステロイド薬は、特効薬として知られています。病気の重症度に応じて量を増減します。重症の方は、1日量プレドニゾロン50~60mgを必要としますし、逆に軽症の人では5mg程度で十分です。最初は多めに、徐々に減らして少量の維持量を長期間続けます。症状や病勢が強い場合、ステロイド薬を点滴で大量に3日間使用するステロイドパルス療法を行うこともあります。ステロイド薬の効果不十分か副作用が強い場合、免疫抑制剤を一緒に使います。そのほか、手足の血行障害の強い場合は血管拡張剤や血栓の予防薬が使われます。近年治療の進歩によりご高齢まで元気な患者さんが増えてきました。そのため、加齢による高血圧、脂質代謝異常症、糖尿病、動脈硬化症などに対する対策も必要です。

図2 SLEの両頬の蝶形紅斑
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図3 皮膚限局性の円板状紅斑
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図4 SLEの手指の凍瘡様紅斑
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図5 SLEの脱毛症とループスヘア
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