Q11ベーチェット病とはどんな病気ですか?
病気について
口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つを主症状とする慢性再発性の全身性炎症性疾患です。トルコのベーチェット医師が初めて報告したのでこの名があります。この病気は日本をはじめ、韓国、中国、中近東、地中海沿岸諸国によくみられるためシルクロード病ともいわれます。平成22年度の特定疾患認定患者数は17,290人ですが軽症例はもっと多いと思われます。発症にはほとんど性差はありませんが、男性の方が重症化しやすく、特に若年発症の男性では重症化し失明に至る例もみられます。発病年齢は、男女とも20~40歳に多く、30歳前半にピークを示します。病因は不明ですが、遺伝素因を背景にして、病原体や環境因子が発症に関与すると考えられています。ヒトの組織適合性抗原であるヒト白血球抗原(HLA)のHLA-B51というタイプとHLA-A26を持つ人に発症しやすいことがわかっています。
症状について
主症状として、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つが重要です。口腔粘膜には円形の境界鮮明な潰瘍ができます(図19)。外陰部潰瘍は男性では陰嚢、陰茎、亀頭に、女性では大小陰唇、膣粘膜に出来て、深掘れで痛みが強いのが特徴です(図20)。皮膚症状では下腿や前腕に結節性紅斑と呼ばれる円型の赤いしこりが出来、痛みを伴います(図21)。座瘡様皮疹は「にきび」に似た皮疹で、顔、頸、胸部などにできます(図22)。下腿などの浅い血管に血栓性静脈炎がみられることもあります。注射や採血で針を刺したあと、発赤、腫脹、小膿疱が出来る針反応が陽性になります。眼症状はこの病気でもっとも重要な症状です。両眼に虹彩毛様体炎が起こり、眼痛、充血、羞明、瞳孔不整がみられます。網膜絡膜炎を起こすと視力が低下し、失明に至ることがあります。これらの主症状以外に関節炎、副睾丸炎があります。まれな病型に深部静脈血栓症など血管病変が生じる血管型ベーチェット病、腸管潰瘍のため腹痛、下痢、下血などを起こす腸管型ベーチェット病、神経症状が出る神経ベーチェット病があります。いずれも難治性で、男性に多い病型です。
治療法
眼症状には、ステロイド、散瞳薬の点眼、ステロイド薬の局所および全身投与、コルヒチンやシクロスポリンの内服、抗TNF-α薬(インフリキシマブ)が難治性眼病変に対して有効です。口腔内アフタ、陰部潰瘍には副腎ステロイド軟膏の局所塗布が有効です。発熱や関節炎などにはコルヒチンが有効とされ、対症的には消炎鎮痛薬を使用します。血管病変、腸管病変、中枢神経病変では、急性期の炎症にステロイドパルス療法を含む大量の副腎皮質ステロイド薬が使用され、難治性の場合は免疫抑制薬を併用することもあります。